2019.8.8

献体とは?手続きの流れと把握しておきたい注意点

献体とは?手続きの流れと把握しておきたい注意点

献体

死後、自分の体が役に立てばと、献体を検討されている人もいるのではないでしょうか。どのように手続きをすればいいか、注意することなどがあれば、あらかじめ知っておきたいですよね。今回はこの記事で、献体の一般的な流れとともに、登録の前に知っておきたいポイントなどをご紹介します。

献体とは?

 

医歯学発展のため、ご遺体を解剖学の教材として提供すること

献体は死後自分の肉体を医学部や歯学部の解剖学教室などに提供することです。献体として提供されたご遺体は、医歯学の発展や優秀な医師、歯科医師の育成に役立てられます。

献体の登録者数は、1970年代半ばまで1万人程度と不足していましたが、1980年代以降急増し、現在は約28万人ほどの登録があるとされています。

 

献体には本人の意思と家族全員の同意が必要

登録の申込み時と、実際にご遺体を引き渡しをする際には、本人の意思とともに家族全員の同意も必要です。本人が献体を希望しても、最終的にご遺体を引き渡すかどうかを決めるのは家族だからです。

大学側としても、家族の反対があるご遺体を引き取るわけにはいきません。一人でも反対の人がいると献体されない場合があります。生前に故人の遺志を確認して十分話し合い、家族全員が納得することが大切です。

献体するための手続き

 

献体登録が事前に必要

献体を行うには、生前から大学や関係する団体に登録しておかなければなりません。各都道府県の大学や関連団体に問い合わせて申込書を入手し、記入して提出しましょう。

申し込みが受理されると、会員証(献体登録証)が発行されます。会員証は紛失しないよう気を付けるのはもちろんのこと、不慮の事故に備えて旅行先などにも持参しましょう。

 

献体登録・献体・火葬の費用は不要

  

葬儀費用や戒名代、納骨費用は自己負担

献体登録をするにあたって、基本的に登録料は不要です。献体や火葬にかかる費用も大学側が負担するのが一般的です。ただし、負担される費用はあくまで献体するために必要な費用と火葬費用のみです。葬儀費用や戒名代、納骨費用は自己負担となります。

大学側が負担する主な費用は下記の通りです。

        

  • 献体の登録にかかる費用
  •     

  • ご遺体の移送費用
  •     

  • ご遺体の保全費用
  •     

  • 献体にかかる費用
  •     

  • 火葬にかかる費用
  •     

  • ご遺骨を返還するまでの預かり費用

献体までの一般的な流れ

 

献体登録大学等へ連絡する

一般的な献体の流れでは、臨終後、ご遺体を献体に引き渡してもいいかを親族内で最終確認した上で、献体登録をしている大学等に引き渡しの日時や場所について連絡をします。

連絡の際は葬儀の日時についても知らせることになります。出棺に合わせてご遺体のお迎えに来てもらうことが多いからです。あらかじめどのようなお別れの形をとるかをどうするかについても決めておきましょう。

葬儀を行う場合の親族への連絡は、大学等へ連絡を済ませた後に行います。

  

夜間の場合は翌朝以降のお迎えになることも

ご遺体を引き渡す時間が土日祝日や夜間の場合は、引き取りが翌朝以降になる場合があります。引き渡しの時刻については、担当者と打ち合わせましょう。

 

葬儀・告別式を行う

大学等へ連絡後、通常のように葬儀・告別式を行います。葬儀社などと相談して、故人の意向や遺族の希望、あるいは地域の風習に沿ってお別れの形をとるといいでしょう。

 

必要書類を用意する

大学へ連絡したあと、死亡診断書や埋火葬許可書の用意も必要です。

死亡診断書は臨終の宣告後、医師から受け取る書類です。正本は死亡届とともに自治体に提出するので、コピーをとっておきましょう。埋火葬許可書は自治体に申請することで交付されます。

 

ご遺骨を受け取る

引き渡したご遺体は、スケジュールに従って解剖額実習された後、火葬されます。その後、ご遺骨として遺族の元に帰ってきます。

ただし、献体登録先によっては希望を伝えれば火葬に立ち会える場合もあります。

献体しない人との違いとは?

 

ご臨終後、献体登録大学へ連絡する

通常、臨終後はすぐに葬儀社の選定や親族、菩提寺への連絡を行います。一方、献体をする場合は、まず献体登録大学等へ連絡します。

 

出棺後、登録大学へ移送する

出棺後は通常火葬場へご遺体を搬送しますが、献体登録大学へ移送することになります。献体を行う場合、遺族としては葬儀・告別式を終え、出棺をした時点が一旦ひとつの区切りになるでしょう。

 

ご遺骨が帰ってくるのは2~3年後

献体する場合、ご遺体は火葬されご遺骨の状態で帰ってきます。ご遺骨が戻ってくるのは早くて1年~1年半、一般的に2~3年後になることも多いです。

ご遺骨の返還に時間がかかるのは、解剖には準備期間として防腐処理を施す時間が必要になることと、スケジュールにしたがって解剖実習が行われるからです。

献体として保管されるご遺体の数は決まっているわけではありません。タイミングによっては来年度の実習に持ち越されることもあり、すぐに解剖が行われない可能性もあります。

献体のメリット

 

医歯学の発展に貢献できる

献体には、医歯学の発展、優秀な医師や歯科医師の育成に貢献するという尊い役割があります。以前に比べて献体登録者数が増えていることも、「亡くなったあとに何かの役に立てれば」と考える人が増えたことがひとつの要因と考えられます。

 

埋葬の負担が減ることもある

ご遺骨は遺族の元へ帰すのが原則とされていますが、献体登録先によっては、ご遺骨を納骨堂に埋葬できることもあります。ご遺体の搬送や火葬費用も基本的に大学側の負担となるため、遺族側や身寄りのない人にとって負担を減らせる部分があるでしょう。

ただし、本来は「無条件・無報酬で提供すること」が献体の精神です。メリットだけを求めるのではなく、献体の本来の意義について、十分に理解した上で登録することが重要です。

実際、近年は火葬や納骨の手間や出費を少なくするため献体を希望する人が増え、一部の大学の納骨堂がいっぱいになっているケースもあるようです。単純に費用負担を抑えるためだけの献体登録は、本来の意義や目的から逸脱する部分もあると考えられます。

献体する場合の葬儀

献体をする場合でも、献体前か献体後に葬儀が行えます。

 

葬儀後に献体する方がベター

献体する場合、ご遺骨の返還まで時間がかかります。遺族の気持ちの区切りをつけるのであれば、葬儀後に献体をするほうがいいでしょう。

献体の受け入れは死後48時間以内なので、最近は通常のお通夜や告別式を行う葬儀以外に一日葬を選ぶ人も増えています。一日葬とは、通夜と告別式とを同じ日に行う葬儀形式です。

 

葬儀前に献体を行う場合

一般的には葬儀を終えた後、献体されることが多いですが、中には献体後に身内だけで葬儀やお別れ会を開くこともあります。葬儀前に献体として提供する場合は、葬儀はご遺体がない状態か、ご遺骨の返還を待って行うことになるでしょう。

 

葬儀を行わないケースも

近年は告別式を省略したり、葬儀自体を行わない形式を選択する人も増えています。お通夜のみでお別れを済ませる場合は翌日の引き渡し、葬儀を行わない場合は、直ちにご遺体を引き渡すことも可能です。葬儀を行わないことは、遺族の身体的・経済的負担が減り、ご遺体の移送にも時間的余裕が生まれることが多いようです。

とはいえ、葬儀を行わないことは、しっかり故人を見送った実感が得られにくく、あとから後悔することも考えられます。遺族が気持ちの面でけじめをつけるのであれば、通常のお通夜や告別式を行う葬儀ほどではなくとも、らかの形でお別れの儀式を検討するほうがいいでしょう。

 

献体する場合、香典は受け取れる?

献体する場合の香典マナーは一般的な葬儀と同じと考えてOKです。

一般的に献体の場合、喪主側は葬儀を簡略化することも多いため、香典の受け取りを辞退することが多いです。しかし、受け取ること自体はマナー違反ではないので、最終的に決めるのは遺族の気持ち次第といえるでしょう。

もし香典を辞退していたとしても、いただいたのなら香典返しを準備する方がベターです。

香典返しの時期や金額も一般的なマナーと同じと考えて問題ありません。香典返しは故人が亡くなった日から数えるものであるのと、弔辞を滞りなく終了した報告の意味があるからです。四十九日の忌明けを目安に送りましょう。

献体を断られるケースとは?

献体はいくつかの条件に該当する場合、登録を断られるケースがあります。大学や関連団体によっても受け入れの基準は異なります。事前に確認してから申し込みをしましょう。

 

親族が一人もいない場合

基本的に献体は、火葬後にご遺骨を引き渡すことになっています。親族が一人もなく、ご遺骨の引き取り手がない場合は断られるケースがあります。

 

献体に同意しない遺族がいる場合

献体は遺族全員の同意が必要です。一人でも同意しない遺族がいる場合、ご遺体を預かることができないため、献体は難しいでしょう。

 

ご遺体の保全が難しい場合

献体されるご遺体は、防腐処置が行われて保管されます。しかし、交通事故で亡くなった場合は、外傷の程度によりご遺体の保全処置が難しいため一般的に献体を断られることが多いです。

同じく、保全処置が不完全になる可能性があるため、手術中または手術直後に亡くなった場合も、献体はできないのが一般的です。その他、献体までの保存状態や死後経過時間によってご遺体の損傷が激しい場合も、献体はできないと考えたほうがいいでしょう。

  • 交通事故で亡くなった場合
  • 手術中、または手術直後に亡くなった場合
  • ご遺体が傷んだ状態にあるとき

 

ご遺体から感染の恐れがある場合

ご遺体から感染の恐れがある場合も、基本的に献体はできません。教職員や医学生への二次感染を回避するためです。献体が断られる主な感染性疾患は下記の通りです。

  • B型肝炎、またはB型肝炎に起因する肝硬変や肝癌
  • C型肝炎、またはC型肝炎に起因する肝硬変や肝癌
  • HIV感染症、エイズ
  • HTLV感染症、ATL(成人T細胞白血病)
  • 結核(特に粟粒結核)

 

臓器提供をした場合

臓器提供をした場合も、献体を行うことができません。臓器移植を行った場合、体内の大きな血管を切ることもあり、防腐処置ができない場合があるからです。また、臓器提供した部分は解剖ができません。基本的に献体は、全身や臓器が完全な状態であることが望ましいと考えられていることと理解しましょう。

ただし、病気や障害を持っている場合は、受け入れ先によって対応が異なります。他のご遺体との比較に役立てられることもあるためです。

ドナー登録をしている場合に献体の登録ができるかできないかについても、大学や関連団体によって対応が異なります。ドナー登録をしている人の献体登録を受け付けない場合もあれば、両方の登録をした上で、亡くなった際に臓器提供か献体のいずれかを選択できる場合もあるようです。

 

亡くなり方によって断られることも

献体を断られるケースには、県外で亡くなった場合や自殺で亡くなった場合などの理由もあるようです。

献体は医学の発展のため、ご遺体を解剖してもらうこと

 

献体は故人の遺志だけでなく家族全員の同意を得ることも大切

献体はご遺体の解剖をしてもらうことです。医学の発展や優秀な人材を育成を目的としており、「人の役に立ちたい」と考えている人にとって、意義ある選択となるでしょう。

ただし、献体は家族全員の同意がなければご遺体を引き取ってもらうことはできません。希望する場合は、生前から十分に周囲の人に気持ちを伝え、お互いに話し合って納得し、理解を得ておくことが大切です。

また、亡くなった際の状況によっては断られるケースもあります。申し込みの際は献体の受け入れ条件についてしっかりと確認しておきましょう。

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