2019.5.16

グリーフケアとは?知っておきたいケアの流れや方法、注意点

グリーフケアとは?知っておきたいケアの流れや方法、注意点

グリーフケアという言葉をご存知でしょうか。大切な人を亡くして落ち込み悲しむ人がそばにいて、力になろうと寄り添い、サポートすることです。今回はこの記事で、グリーフケアとは何をすることなのか、具体的なケアの方法や注意点などについてご紹介します。

グリーフケアとは?

大切な人を亡くし、悲しんでいる人に寄り添い手助けをするケア

グリーフケア(grief care)は、家族や親しい人が亡くなって深い悲しみの中にいる人に対し、寄り添って支援しながら、悲しみから立ち直れるようにすることです。
グリーフは英語で「悲嘆、深い悲しみ」、ケアは「世話」の意味があることから、悲嘆ケア・遺族ケアと呼ばれることもあります。

グリーフケアはいつから始まった?

グリーフケアは1960年代にアメリカで始まり、ヨーロッパにも広がったといわれています。アメリカなどでは現在、大切な人を亡くした際に医師やグリーフアドバイザーによるケアを受けることが一般にも浸透しています。

国内では1970年ごろから研究

国内でグリーフケアが研究され始めたのは1970年代ごろとされています。医療の進歩に伴う平均寿命の延長や、核家族化や非婚化など家族のかたちの変化も影響を与えた要因のようです。

研究だけでなく一般にもグリーフケアが認知されたのは、2005年に起こった西日本旅客鉄道の福知山線脱線事故がきっかけといわれています。その後、2009年には専門の研究機関も設立されるなど、現在は各地の医療機関、市民グループなどがグリーフケアに取り組んでいます。

グリーフケアが必要な人

グリーフケアが必要とされる症状は、大きく分けて3つのタイプに分けられます。人によっていくつかの症状が重なったり、一旦落ち着いても何かのきっかけで数年後に再発することもあります。

グリーフケアは単なる気分的な落ち込みと区別が難しい部分がありますが、症状が出ているのに放置をすると、最悪の場合うつ病や外傷性ストレス障害(PTSD)、不安障害などの疾患につながるので注意が必要です。

精神的な症状

悲しみや寂しさ、怒り、やるせなさ、罪悪感、孤独感、 感情の麻痺、空虚感、 無力感 、抑うつ症状などの精神的な症状が出ている場合はグリーフケアが必要といわれています。人によっては恐怖にも似た不安感を感じることもあります。

亡くなった人を思い起こし、恋しい気持ち(思慕の情)に襲われることや、自責の念に駆られることもあります。あるいは対人関係で人と違う気持ちになったり気後れするなど、疎外感を感じるなどの症状が現れることもあります。

身体的な症状

グリーフケアは、睡眠障害や食欲減退、体重減少など、身体的な症状が出た場合も必要とされています。強い疲労感や、具体的に頭痛や肩こり、めまい、動悸、便秘や下痢など胃腸の不調、血圧の上昇などを起こす人もいます。そのほか白髪が急増したり、体力の低下から免疫機能の低下を引き起こすこともあります。

行動の変化

大切な人を亡くした場合、人によっては行動に変化が起こることもあります。例えば集中力の低下や落ち着きがなくなって探索行動をするなどです。混乱や動揺などの症状が現れることや、何もやる気がなくなり引きこもる、うつ的な症状が出ることもあります。そのほか、落ち込んでいる自分を何とかしよう、奮い立たせようとして動き回るケースもあります。いずれにせよ、以前の生活と異なる行動や、今までしなかった行動をとるようになった場合も、グリーフケアが必要です。

グリーフケアを行える人とは?

家族や友人など身近な人から専門家まで

グリーフケアは英語を使った名前なので、一見専門職のように感じるかもしれません。もちろん医療関係者や専門家が行うこともあります。ですが、一般的には家族や友人など身近な人が行うことが多いです。

グリーフケアの資格

グリーフケアの資格は主に2つあります。グリーフケア・アドバイザーとグリーフ・カウンセラーです。グリーフケアは資格がなくても行えますが、専門家や葬儀関係者などの中には、より高度なケアを提供できるよう、勉強する人もいるようです。

グリーフケアの流れ

グリーフからの回復には、主にショック期、喪失期、閉じこもり期、再生期のプロセスがあります。

グリーフケアでは、正直な感情を抑圧せず、むしろ自分の感情を自覚することにより、徐々に死を受け入れ、乗り越えた後、再び積極的に他者や社会と関わり活動できるらようにサポートします。グリーフケアの課程はグリーフワークやモーニングワークと呼ばれることもあります。

グリーフケアのポイント

誰しも、身近な人との死別に大きなショックを受けると、深い悲しみや喪失感、後悔や怒りなど、さまざまな感情が複雑に絡み合って押し寄せ、不安定になりやすいです。故人の死を受け入れ、立ち直ろうとする気持ちはあっても、受け入れられない気持ちと葛藤が生まれることや、知らず知らず思い出してその都度打ちのめされることもあります。中には自分の存在が無意味に思えたり、死に関することばかり考えてしまう人もいます。

回復への道のりは時間がかかります。朝は回復傾向だったのが、一日の終わりに再び元の状態へ戻ることもあります。グリーフケアは、回復と後退を繰り返しながら進んでいく状態に合わせて、徐々に元の状態へ戻れるようサポートすることが大切です。

悲しみを肯定する

グリーフケアを行うポイントのひとつは、悲しみを肯定することです。日本人はとりわけ自己表現が苦手といわれていますが、悲しみを感じても人目を気にして抑えこむ傾向があります。まずは、「今悲しいと感じていることは至極自然な感情である」ことを肯定してあげましょう。

語り合い、思いを吐き出す

悲しみを乗り越えるには、感情を思い切り外に吐き出すことも必要です。故人との思い出を語ることや、故人に宛てた手紙を書くなど効果的といわれています。自分の気持ちを表面に出すのが苦手な人であれば、写真や遺品など故人を連想しやすいものを手元に置いておくと、スムーズに表現できることもあります。

身内や知り合いに直接思いをぶつけるのが難しい場合は、同じような境遇で大切な人を亡くした人が集まり、思いを話す会に参加するのも有効な手段です。お互いの気持ちが理解しやすいからこそ、素直に気持ちを話したり、悲しみを乗り越えやすいといわれています。

お別れの儀式を行う

葬儀やお別れ会など、故人とのお別れセレモニー自体も、グリーフケアのひとつです。お別れの手段には、故人の遺品整理やお墓への納骨などもあります。儀式や遺品整理、納骨などを通して、亡くなったことを現実として受け止めることにつながるからです。

セレモニーを行う場合も重要なのは、感情を押し殺さないことです。感情を押し殺せば押し殺すほど、悲しみを乗り越えることから遠ざかってしまうためです。ケアを必要とする人が、周囲の視線を気にして平常心を保とうとしないよう、悲しみの気持ちを素直に吐き出せるようにサポートしてあげることが大切です。

また、遺品整理や納骨も気持ちの整理には有効ですが、無理に行うのは避けましょう。ケアが必要な人の状態に合わせ、区切りになりそうなタイミングで行うのがベターです。

専門家に相談する

グリーフケアは家族や友人など身近な人が行うことが多いですが、感情を表に出さず、非常に強い絶望感や不安い襲われているなどの状態であれば、専門家や団体相談する方法もあります。専門家が在籍する機関ではカウンセリングを行っていることもあります。中には電話やテレビカウンセリングを行っていることもあります。費用は面談時間に応じて60~90分で10,000~20,000円程度と幅があり、利用する機関によってばらつきがあります。

グリーフケアの注意点

基本スタンスは「さりげなく寄り添う」

周囲がグリーフケアを行う場合は、一方的に励ますのではなく、苦しんでいることを認め、さりげなく相手に寄り添うことを目標にしましょう。深く介入しすぎると、逆効果になることもあるからです。

特に、身近な人が悲嘆に暮れている場合、心配のあまり「何か食べたほうがいい」、「そんなに泣いても、もうあの人は戻ってこない」と前向きな声掛けをしてしまいがちなので気を付けましょう。「食べなくてはいけない」「泣いてはいけない」と思うことは、プレッシャーをかけることや悲しみを押し殺すこともあります。

相手の状態によっては、どんな声掛けをすればいいか戸惑うこともあるかもしれませんが、グリーフケアの原則は相手に感情を吐き出してもらうことです。まずは本人が感情に逆らわず、泣きたいときは泣き、とことん落ち込んで過ごせるようにしてあげましょう。

グリーフケアを意識して悲しむ身近な人のサポートを

グリーフケアは大切な人を失い、深い悲しみの中にいる人をサポートすることです。ケアを行うときのポイントは、相手に寄り添うことです。誰しも大切な人を失ったときは、感情が不安定になり、ときには自分が生きている意味すら分からなくなることがあります。ですが、日本人は周りに気を使い、感情を押し殺すことが多いです。悲嘆の感情を押し殺すことは、症状の悪化や精神的な疾患を招くことにつながりかねません。グリーフケアは特別な資格がなくても行うことが可能です。ケアが必要な人が悲しみを肯定し、感情を吐き出せるように寄り添い、時間をかけて大切な人の死を受け入れ乗り越えられるようにサポートすることが大切です。

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