2019.12.24

枕経とは?内容と方法、依頼から実施までの流れ

枕経とは?内容と方法、依頼から実施までの流れ

枕経は臨終に際して行う仏教儀式のひとつですが、聞いたことはあっても実際のイメージがわかない人もいるのではないでしょうか。実際、社会的環境や葬儀に対する意識に合わせて、枕経のあり方も変化しているようです。今回はこの記事で、枕経の意味や行うタイミング、一般的な流れについてご紹介します。

枕経とは?

 

故人が迷わず極楽浄土へ旅立てるようにお経をあげること

枕経(まくらきょう、まくらぎょう)は、臨終に際して故人が仏弟子となり、迷うことなく極楽浄土へ旅立てるようにと願いを込めて読経をすることです。

枕経の起源は平安時代中期にまでさかのぼるとされています。「枕経」という言葉も、最期の時を看取りながら故人の成仏を願ってお経をあげたことが由来となっているようです。

ただ、以前であれば自宅で亡くなる人が多く、危篤を知らされた時点で親族も集まるのが一般的でしたが、最近は病院で亡くなるケースも増えています。

臨終を迎える場所の変化から、本来は「臨終を迎えつつある人の枕元でお経を唱えること」を意味した枕経も、現在は臨終後すぐに行うのが一般的です。危篤から臨終の間に枕経を行うことが少なくなったことで、意味合いも「死者に初めてお経を聞かせること」と変化しています。

 

枕経と仮通夜との違い

枕経と仮通夜は、どちらも遺族が見守る中で僧侶に読経をしてもらうのは似ていますが、意味合いは異なります。

枕経は、現在は亡くなってから読経を行うのが一般的とはいえ、本来は命が残りわずかになった人が迷わず往生できるよう、祈りを込めてお経を唱えることを意味しました。

一方、仮通夜は亡くなった当日に親族のみで行う通夜のことです。枕経では僧侶に読経をしてもらうだけですが、仮通夜では読経のあと、親族や近親者が一晩中ご遺体を見守るのが習わしです。

 

枕経は近親者のみで行うのが基本

枕経は基本的に近親者のみで行います。一般的に遺族のみで、親族も呼ばないことが多いです。一般の人が参列することも、ほとんどないでしょう。

ご臨終から枕経までの流れ

ご臨終から枕経を行うまでの一般的な流れをご紹介します。菩提寺や葬儀社への連絡やご遺体の搬送・安置は順番が前後することもあります。

 

菩提寺や葬儀社に連絡

枕経をするにあたっては、お世話になっている菩提寺に依頼するのが一般的です。寺院へ連絡し、枕経の依頼と日時と場所を伝え、都合を伺いましょう。菩提寺の都合がつかない場合は、菩提寺から同じ宗派でほかの寺院の僧侶を紹介してもらえることもあります。

枕経を依頼するにあたって、寺院からは故人の名前、死亡日時や時刻、享年、生年月日などを聞かれることが多いです。あらかじめ把握しておきましょう。

また、葬儀社にはご遺体の搬送を依頼しましょう。

 

ご遺体の安置

最近は病院で亡くなるケースが多いです。枕経を行うには、ご遺体の安置場所を決めて病院から搬送する必要もあります。ご遺体の安置場所については葬儀社に相談して決めましょう。

自宅に搬送する場合は、できるだけ広めの部屋を用意するほうが望ましいです。枕飾りを置くスペースが必要だからです。住宅事情によっては、直接斎場へ搬送する場合もあります。

ご遺体の安置場所が決まったら搬送し、白いシーツをかけた布団の上に、北枕になるようにしてご遺体を寝かせます。お顔には白い布をかぶせます。

 

僧侶を迎える準備

枕経の前に、僧侶を迎える準備もしておきましょう。一般的に用意するのは僧侶が座る座布団や茶菓です。僧侶に足を運んでもらう場合は、お車代も準備しましょう。

僧侶が到着したら、あいさつをして迎えます。例えば「お忙しい中ありがとうございます。何分不慣れなため、よろしくご指導ください。どうぞよろしくお願いします。」などです。

  • 僧侶に座ってもらう座布団
  • 枕経の後に僧侶をもてなすお茶やお茶菓子
  • お車代

 

枕飾りを設置する

ご遺体の枕元には、枕飾りを設置します。枕飾りとは白布をかけた白木の台を用意し、「三具足」と呼ばれる香炉・蝋燭立て・花立てを供えることです。その他にも、鈴、ローソク、枕団子、山盛りのご飯(一膳飯)などを供えます。

枕団子の数や、一膳飯の盛り方は、宗派や地域によって作法が異なる場合があります。地域によっては、枕飾りとして末後の水として水をお供えすることもあります。邪気を払うという意味から、ご遺体の胸元や枕元、布団の上などに守り刀を置くこともあるようです。

不安な点は葬儀社と相談しながら用意するのがベターですが、葬儀社に依頼すれば宗派に合わせた枕飾り一式を手配し、整えてくれることも多いです。依頼する際に確認するといいでしょう。枕飾りの費用相場は、物品数やグレードによって変動しますが、1~3万円が一般的です。

 

枕経をあげる

僧侶との挨拶が終わったら、近親者同席のもと、枕経をあげてもらいます。読経の内容は宗派によって異なります。読経の間、遺族は後ろに控えて故人の冥福を祈ります。時間的には30分程度が多いようです。

 

戒名の依頼や葬儀の打ち合わせを行う

枕経が終わったあとは、お通夜や告別式にも同じ僧侶に依頼する場合は、戒名や葬儀の日取りの相談を行います。戒名をつけるにあたっては、故人の人柄やどんな人生だったかを伝えるといいでしょう。

葬儀の日時の打ち合わせでは、僧侶の都合を伺うとともに、予定している葬儀の形式や内容についても相談しましょう。

 

納棺まで枕勤めを行う

枕経のあと、遺族は枕勤めを行います。枕勤めとは、ご遺体を納棺するまで枕飾りのローソクと線香の火を絶やさないようにすることです。

ローソクや線香についても、葬儀社が用意してくれることがあります。線香は、通常より長時間火をともせる「うずまき線香」を用いることが多いです。

菩提寺がない場合の枕経

 

葬儀社に紹介してもらうのが一般的

枕経を依頼できる菩提寺がない場合は、葬儀社に紹介してもらうのが一般的です。菩提寺の都合がつかず、他の僧侶を紹介してもらえない場合も、まずは葬儀社に相談しましょう。

枕経にお布施は必要?

 

枕経単独のお布施は不要

枕経では僧侶に読経をしてもらいますが、枕経のみでお布施を包む必要はありません。枕経は葬儀で行う一連の儀式の一部として考えられるためです。

一般的には、枕経をあげてもらう僧侶には、お通夜、葬儀、告別式、初七日の繰り上げ法要と葬儀全体の読経を依頼することが多いです。お布施は、全ての儀式を終えたあとにまとめて渡せば問題ないでしょう。

もし、枕経と葬儀を依頼する僧侶が異なる場合は、お布施を渡すタイミングについて葬儀社に相談されることをおすすめします。

お布施の金額については、明確な相場がないのが実情です。菩提寺との関係や宗派、地域によって差がありますし、いただく戒名のランクによっても変動します。金額について悩んだ場合は、直接寺院に相談しても失礼にはあたりません。いくらくらい包めばいいか分からないと伝えた上で聞いてみるといいでしょう。

 

お車代はその日のうちに渡す

枕経のお布施は基本的に後払いで、葬儀のすべての儀式が終わったあとにまとめて渡しますが、お車代だけはその日のうちに渡す必要があります。

枕経で渡すお車代の目安は、5,000~10,000円程度といわれています。ただし、送迎タクシーなどを手配し、遺族が費用を支払った場合はお車代を渡す必要はありません。

宗派ごとの枕経の特徴

 

浄土真宗や神式・キリスト教式では行わない

枕経は仏教の儀式なのでキリスト教式葬儀で行われることはほとんどありません。神式葬儀も玉串や榊などの枕飾りを設置することは多いですが、枕経を行うことはないでしょう。

また、仏教宗派の中でも浄土真宗は、故人の枕元ではなく、仏壇か掛け軸のご本尊に向かって読経し、その後法話を行うのが一般的です。

浄土真宗で枕経をしないのは、人は死後すぐに極楽浄土に到達するという教えが基本にあるためと考えられます。読まれるお経の種類は、本願寺派は『阿弥陀経』、真宗大谷派では『正信偈』が多いようです。

 

浄土宗

浄土宗の枕経では、『阿弥陀経』や『仏身観文』、『四誓偈』などを読経するのが一般的です。枕元には来迎仏やお名号の掛け軸や屏風を飾り、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えます。

 

天台宗

天台宗の枕経では、故人が浄土へ導かれるよう祈ることが主な儀式とされています。臨終誦経を行ったり、枕元で『阿弥陀経』や『般若心経』を読経することが多いです。

 

真言宗

真言宗では、僧侶が故人に末期の水を行い、印を結び、読経する流れが一般的です。掛け軸は「南無大師遍照金剛」を掛けることが多いですが、本来は不動明王の絵像(掛け軸)を掛けるのが習わしとされています。

 

臨済宗・曹洞宗

臨済宗や曹洞宗など禅宗では、枕経を「枕経諷経(ふぎん)」と呼び、『観音経』や『大悲心陀羅尼』を唱えて故人の冥福を祈ります。曹洞宗の場合は『仏垂般涅槃略説教誡経』、『参同契』、『宝鏡三昧』などを読経する地域もあります。

 

日蓮宗

日蓮宗の枕経は、仏壇に仏様を招く勧請を行い、経文を唱えて、『方便品』や『自我偈』などを読経し、故人の冥福を祈るのが一般的な流れです。日蓮宗の場合、木魚の代わりに「木鉦(もくしょう)」を使うのも特徴的です。

宗派によっては枕元に導師本尊(故人の即身成仏のための本尊)を掲げ、読経の途中で焼香を行うこともあります。

  

本来枕経をする宗派でも現在は省略するケースが多い

本来は枕経を行う宗派でも、近年は省略したり、仮通夜やお通夜と同時に行うケースが増えています。

省略するケースが増えた背景には、以前は自宅で看取るのが一般的だったのが、最近は病院で亡くなるケースが増えたことや、葬儀自体の簡素化も影響していると考えられます。住宅事情も変化し、マンションやアパートなどでご遺体を安置する場所が確保できないとの理由から、ご遺体を直接斎場へ搬送するケースも増えています。

とはいえ、枕経は故人の冥福を祈って唱えるお経です。斎場でも枕経を行うことはできますし、納棺前やお通夜の前に行うことも可能です。葬儀を始める前に、故人と最期に向き合える静かな時間でもあるので、大切にしたい儀式といえるでしょう。

枕経に参列する場合の服装や持ち物

 

平服で出席するのがマナー。喪服でなくともOK

枕経に出席する際の服装は喪服を着る必要はありません。地味な色の平服ならOKです。ただし、派手な色の服装は避けましょう。アクセサリーも控えるのがマナーですが、結婚指輪のみつけていてもよいとされています。

基本的に遺族のみで行う枕経ですが、訃報を聞いて近しい親族として駆けつけることがあるかもしれません。親族が駆けつける場合、枕経のために香典を持参する必要はありません。

 

数珠の持参を忘れずに

枕経に出席する際は数珠を用意しましょう。焼香を行うことが多いからです。

枕経は故人の枕元で冥福を祈って唱えるお経

 

枕経は菩提寺か葬儀社に相談を

枕経は故人が迷わず極楽浄土へ旅立てるようにとの願いを込めて行う儀式です。ご遺体を安置し、枕飾りを整えたら僧侶に読経をしてもらいます。

枕経に立ち会うのは基本的に遺族のみです。現在は省略することもあるため、実際に経験する機会は少なくなっているかもしれません。ですが、遺族にとっては故人の死に向き合い、送り出す大切な儀式といえるでしょう。

枕経について分からないことがある場合は、菩提寺や葬儀社とも相談しながら手配を進めていきましょう。

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