葬儀・お葬式で読まれるお経の種類
お経の種類は数多く、葬儀でも宗派ごとに読まれるお経が異なります。慣れないと同じように聞こえますが、葬儀の中でも、通夜や葬儀、火葬場とでは、違う種類のお経が読まれていることも多いです。
今回は宗派ごとに、お葬式で読まれる機会が多いお経の種類についてご紹介します。
葬儀でお経が読まれる機会とお経の種類
4種類のお経が読まれることもある
葬儀を行うにあたり、お経を読むタイミングは、納棺前に行う枕経や通夜、葬儀・告別式、火葬場と、4回ほどになるのが一般的です。それぞれの場面で、どのようなお経を読むかについては、宗派によって異なります。
葬儀の形式によっても、火葬場での読経については省略することや、葬儀と告別式とでお経の種類が異なる場合もあります。
宗派ごとの葬儀で読まれるお経の種類
葬儀で読まれるお経は、仏教の各宗派が大切にしている経典が元になっています。経典とは、それぞれの宗派の信仰や教えの根本となる、大切なものです。宗派が違うように、経典も宗派ごとに異なるため、お葬式で読まれるお経の種類も違うのです。
今回は、日本仏教の主となる、7つの宗派が、どのようなお経の種類を読むことが多いかを見ていきましょう。
- 天台宗
- 真言宗
- 臨済宗
- 曹洞宗
- 浄土宗
- 浄土真宗
- 日蓮宗
葬儀で読まれるお経の種類(1)天台宗
天台宗の葬儀では、阿弥陀経をはじめ、4種類ほどのお経を読まれるようです。特に葬儀では、阿弥陀経や法華経葬儀を中心に読まれることが多いです。
- 法華経
- 般若心経
- 阿弥陀経
- 妙法蓮華経
葬儀で読まれるお経の種類(2)真言宗
真言宗は印を結んだり、真言を唱えたりするのが特徴の宗派です。真言宗の葬儀では、理趣経と呼ばれるお経の種類を読まれることが多いです。
- 般若心経
- 理趣経
- 遺教経
- 妙法蓮華経
葬儀で読まれるお経の種類(3)臨済宗
臨済宗の葬儀は、鈸や太鼓が打ち鳴らされるのが特徴です。
臨済宗は枕経で観音経や大悲心陀羅尼、通夜は遺教経や父母恩重経などのお経の種類を読まれることが多いです。
葬儀では観音経や大悲心陀羅尼などを読み上げます。
- 般若心経
- 妙法蓮華経
- 大悲心陀羅尼(大悲咒)
- 観音経
- 白隠禅師坐禅和讃
葬儀で読まれるお経の種類(4)曹洞宗
曹洞宗は臨済宗と同じく禅宗です。葬儀でも、臨済宗のように鈸や太鼓が打ち鳴らされる「鼓鈸三通」が行われます。
曹洞宗では、枕経に遺教経や舎利礼文、 通夜では一般的には観音経や、宗祖である道元の教えをまとめた「修証義」などのお経が読まれます。葬儀では、臨済宗と同じく、大悲心陀羅尼などを唱えることが多いようです。
曹洞宗の葬儀は、どちらかというと、和語からなるお経の種類を中心に読まれることが多いことも特徴のひとつです。和語のお経を読む目的は、遺族たちにより分かりやすく、世の無常を説くためといわれています。
- 般若心経
- 観音経
- 妙法蓮華経
- 大悲心陀羅尼(大悲咒)
葬儀で読まれるお経の種類(5)浄土宗
浄土宗の葬儀では、数多くの念仏を唱えることが特徴です。お経の種類としては、阿弥陀経を中心に読まれるのが一般的です。ほかにも無量寿経の一節である「四誓偈」や、観無量寿経の一節の「真身観文」や「仏心観文」なども読まれることがあります。
- 阿弥陀経
- 無量寿経
葬儀で読まれるお経の種類(6)浄土真宗
浄土真宗も浄土宗と同じく、葬儀では阿弥陀経を中心としたお経の種類が読まれます。
ただ、浄土真宗の場合は、本願寺派と大谷派とで、読まれるお経の種類が違うこともあるようです。
例えば浄土真宗本願寺派の場合は、通夜は阿弥陀経、葬儀では親鸞聖人が記した『教行信証』の中から「正信偈」や、「重誓偈」などの偈文が読まれます。偈文とは、お経の一部や解釈文などのことです。
一方で浄土真宗大谷派の場合は、通夜では「正信偈」を読み、葬儀では「正信偈」以外に「勧衆偈」を読み上げることもあります。
- 阿弥陀経
- 無量寿経
- 正信偈
葬儀で読まれるお経の種類(7)日蓮宗
日蓮宗の葬儀は、お経を読んでいる間、木鉦(もくしょう)という打楽器を使うのが特徴です。
葬儀では、法華経や妙法蓮華経といったお経の種類を読み上げます。お経とともに、お題目である「南無妙法蓮華経」を唱えるのも宗派の特徴です。
- 法華経
- 妙法蓮華経
お経の全種類はお釈迦様の教え
お経はお釈迦様の弟子たちが教えをまとめたもの
お経にはたくさんの種類がありますが、全てのお経は、お釈迦様が説いた教えを、弟子たちがまとめたものです。
一口にお経と言っても、仏教ではお経による教えを「八万四千の法門」と呼ぶほど、たくさんの種類があります。短いものだとよく知られた『般若心経』が260文字ですが、中には600巻からなる『大般若経』というボリュームのあるお経まで存在します。
「八万四千」はお経の数ではない
「八万四千の法門」といわれて、数字で「84,000」と考えると、とてつもない数の教えがあるように思えます。ですが、実際のお経の種類としては、現在のところ、『大正大蔵経』に収蔵されている3,000種類ほどが、ほぼすべてのお経を網羅しているといわれています。
「八万四千」というのは、お釈迦様が相手の状況や悩んでいること、どんな能力や性格かによって、さまざまな教えを説いたことに由来します。
お経の中身はお経の種類ごとに異なる
お経の冒頭部分はほとんどが「如是我聞(にょぜがもん)」で始まるものの、それ以後の中身はお経の種類ごとに異なります。「如是我聞」とは、お釈迦様の教えを「私はこのようにお聞きしました」という意味です
お釈迦様は教える相手に合わせて教えを説いたので、相手の性格が「消極的」か「積極的」かによって、まったく正反対の教えも存在するそうです。
全ての宗派で共通するお経の種類はない
お経の種類は数多く存在しますが、全ての宗派で共通して読まれるお経はないようです。
いくつかの宗派で読まれるお経もあれば、特定の宗派でしか読まれないお経もあります。
葬儀で読むお経の種類は、宗派によって異なる
葬儀前にお経の意味を聞くことでより供養につながることも
葬儀の中でお経が読まれるタイミングは何回かありますが、お経の種類はひとつとは限りません。宗派によっても、読まれるお経の種類は異なります。
「南無阿弥陀仏」や、「南無妙法蓮華経」などのお題目はなんとなくわかっても、お経がどんな意味があるかは分かりにくいことが多いです。お経はお釈迦様の教えです。耳を傾けるだけでもいいですが、より理解を深めたいと思ったら、葬儀前に僧侶に尋ねてみるといいでしょう。
お経の意味を知りながら聞けば、より故人への弔いにもなるでしょう。