分骨は縁起が悪い?分骨の意味や手順や供養の方法について
分骨という言葉をご存知でしょうか。近年、生活スタイルの変化や埋葬方法の多様化から、選ばれることが増えている供養の形のひとつです。今回は分骨の意味や法律的に問題ないか、分骨の方法や流れ、注意点などについてご紹介します。
分骨とは
遺骨を2か所以上に納骨すること
分骨は文字通り「お骨を分けること」です。故人の遺骨を取り分け、2か所以上の場所に納骨し、管理・供養を行います。
分骨は縁起が悪い?
分骨をすると魂が引き裂かれ、生まれ変わるときに五体満足にならない、魂が迷子になって成仏できないなどの考え方から、縁起が悪いとする意見もあります。
分骨をするのがよくないとされた背景には、仏教における輪廻転生の教えが影響していると考えられます。遺骨には故人の魂が宿っているとも考えられてきたので、残された人たちにとっても、遺骨を故人の生きた証として、面影を見る気持ちもあったのでしょう。現実的にも、遺骨は一か所に遺骨を納めるのが主流だったため、分骨をよくないとする考え方が生まれたのかもしれません。
とはいえ、仏教の教えでも、亡くなってから四十九日目で故人の魂はあの世へ旅立つとされ、遺骨にずっと魂が留まり続けるとは限らないはずです。分骨によって魂が引き裂かれるともいえないでしょう。何より、故人は残された家族の幸せを願っているはずです。分骨によって残された家族に心の支えができるのであれば、悪いことが起こることはないのではないでしょうか。
分骨は尊いとされる習慣
分骨は縁起が悪いとする考え方があるものの、分骨自体は昔から広く行われて習慣です。むしろ、尊い行為でもあったと考えられます。
例えば、仏教では寺院に分骨したお釈迦様の遺骨を祀る仏舎利があります。キリスト教でも聖人の遺骨の一部が「聖遺骨」として保管され、今に伝わっています。どちらも、分骨することにより、多くの人にとって心のよりどころとされたことでしょう。
分骨の目的
複数のお墓で供養する
分骨の目的や理由は人それぞれですが、複数のお墓で供養するために行うケースは多いです。例えば離れて暮らす兄弟姉妹が、それぞれに建てたお墓で両親を供養するために行うことがあります。
距離的・年齢的な問題から分骨を検討する場合も増えています。菩提寺に先祖代々のお墓があるものの今住んでいる場所から遠方にあり、年齢的に体力に問題が合ってお墓参りがしづらくなるなどです。自宅近くに新たにお墓を建てたり、手元で供養をするケースも増えています。
宗教上の習わし
分骨は宗教上の習わしで行われることもあります。例えば浄土真宗では、宗祖への畏敬の意味から、遺骨の一部を本山に分骨することが多いです。
遺族の心の支え
分骨した遺骨を手元に置いておくことで、遺族の心の支えとなる場合もあります。生前の故人が希望していたり、遺族が故人と一緒にいたい気持ちから分骨を行うこともあります。
法律上も認められている行為
遺骨を分骨することは、墓地・埋葬に関する法律でも認められた行為です。遺族が希望さえすれば、分骨を行うこと自体は問題ないでしょう。
分骨を行うタイミング
火葬場での火葬時
分骨は火葬場での火葬を行う際に行うことが多いです。すでに遺骨を手元に置くことや、親族間でそれぞれのお墓に埋葬を行うと決めている場合は火葬場で分骨するケースが多いです。
火葬場で分骨する場合の流れ
火葬場で分骨をする場合は、火葬後に骨上げを行う際に遺骨を取り分けるのが一般的です。あらかじめ分骨をすると決めている場合は、事前に分骨を希望する旨を葬儀社の担当者に伝えておけば、火葬時にスムーズに取り分けることができるでしょう。納骨までに骨壺から遺骨を取り出し、分骨したい場合も、相談しておくといいでしょう。
埋葬した遺骨の分骨
分骨を行える時期について決まりはないため、いつでも行えます。住んでいる場所の近くに新たにお墓を建てて供養する場合などは、すでに埋葬した遺骨を取り出して分骨をする場合もあります。
埋葬後に分骨する場合の流れ
一旦埋葬した遺骨を分骨する場合は、お墓がある寺院や管理会社、石材店などに依頼し、分骨を行うスケジュールを調整します。埋葬後に分骨をする場合は、事前に親族内にも了承を得ておくことが大切です。
宗派や地域によっては、分骨を行う当日、僧侶に閉眼供養を行ってもらってから遺骨を取り出し、分骨を行います。分骨を行ったあとは、再び元のお墓の開眼供養を行い、分骨先でも開眼供養を行います。
閉眼供養は墓石をただの石にするための、「魂抜き(お性根抜き)」の供養です。反対に開眼供養は墓石に魂を入れる供養のことです。
各宗派本山への分骨
信仰する宗派によっては、遺骨の一部を宗派の総本山・大本山など分骨を行う場合もあります。本山への分骨は、信心深い信仰者である証として行う場合もあれば、昔からの地域の慣習の場合もあります。
本山への分骨は、希望すれば誰でも申し込める場合もあるようです。興味がある場合は菩提寺や本山へ問い合わせてみるといいでしょう。
関西では喉仏だけ分骨する場合も
関西では本山納骨する場合、喉仏の骨だけを分骨して納めることが多いです。喉仏とは第二頚椎の骨のことです。名前の通り、骨の形が仏様に似ていることから故人の分身と考えられてきました。
本山納骨で喉仏だけを分骨するのは、全国から数多く遺骨が集まるため、すべての遺骨を納骨するのが難しいことも影響しているのかもしれません。
分骨に必要な手続きや用意するもの
分骨は法律上認められた行為ですが、実際行うにはいくつかの決まりがあります。犯罪等で使われる恐れを防ぐためです。
埋葬するには分骨証明書が必要
分骨した遺骨を別のお墓など2か所以上に納骨する場合、それぞれの納骨先に「火葬証明書(分骨用)もしくは分骨証明書」の提出が必要です。「火葬証明書(分骨用)もしくは分骨証明書」は火葬時に係員に渡す「火葬許可証」とは異なるので注意しましょう。
分骨証明書によって、遺骨の身元が確かだという証明ができます。身分証明書のようなものなので、分骨する数分だけ証明書を発行してもらう必要があります。
法律でも、分骨を希望する人がいる場合、火葬場や墓地の管理者は遺骨が分骨されたものであることを証明する証明書を発行しなければならないと定められています。
また、分骨を受け入れる側も、証明書がなければ受け入れてはならないとされています。
火葬場や管理者に発行の依頼を
分骨証明書は、火葬時に分骨をする場合は火葬場に用意してもらうのが一般的です。葬儀社に依頼すると、火葬場に手配してもらえることもあるようです。あらかじめ分骨を決めている場合は相談してみるといいでしょう。
ただし、火葬場によっては当日でないと発行してもらえないこともあります。事前に確認しておくことも大切です。
すでに埋葬した遺骨を分骨する場合は、お墓や納骨堂を管理している寺院、管理会社などに発行を依頼します。
分骨証明書の発行にあたっては手数料がかかります。一般的には1通数百円程度ですが、自治体によって異なります。
ちなみに、分骨した遺骨を自宅で保管する場合や散骨する場合など、分骨後の供養方法によっては、証明書が不要になることもあります。分骨証明書は埋葬する場合に必要になる書類だからです。
ただ、何かのきっかけで納骨することになるかもしれないので、念のため事前に取得し保管しておくほうが安心かもしれません。
分骨用の骨壺を準備
分骨をして遺骨を別々の場所に埋葬する場合は、分骨する数の分だけ、骨壺を準備しておく必要もあります。
骨壺にはさまざまな大きさがありますが、遺骨の一部を納めるのであれば、小さいサイズの骨壺でも十分でしょう。火葬場によっては分骨用の骨壺を分けてもらえることもあります。
骨壺は置物型以外に携帯できるタイプのものもあり、素材も陶磁器や金属、ガラスなど種類が豊富です。特に決まりはないので、形や色など気に入ったものを選んで問題ないでしょう。
遺骨の取り出しは石材店や寺院へ連絡を
埋葬した遺骨を取り出して分骨する場合は石材店へ連絡しましょう。墓石を動かして納骨堂をあけ、遺骨を取り出すのは一人ではできないからです。費用は2~3万円程度が相場といわれています。
霊園や納骨堂等から遺骨を分骨する場合は、管理会社にも連絡し、管理者に立ち会いを依頼しましょう。
閉眼供養、開眼供養を行う場合、僧侶の立ち合いも必要です。供養の依頼は菩提寺にするといいでしょう。閉眼供養や開眼供養には、お布施として1~3万円程度包むことが多いようです。
分骨後の供養方法
お墓に納骨する
分骨後の供養方法のひとつは、先祖代々のお墓以外のお墓へ納骨することです。故人の子供や兄弟姉妹などが、新たに建立したお墓に分骨した遺骨を納骨する場合が多いです。
手元供養
手元供養は遺骨や遺灰を自宅に保管し、供養を行うことです。「自宅供養」と呼ばれることもあります。故人の分身として手元に置き、供養したいと考える人が選ぶケースが多いようです。
手元供養の形は自宅に保管する以外にも、ペンダントや指輪などに遺骨や遺灰を入れ、身に着ける形の供養もあります。人によっては遺骨を粉砕・加工してアクセサリーや陶器などにするケースもあります。
永代供養
永代供養は寺院や霊園が管理する墓地や納骨堂等に埋葬し、供養を依頼する埋葬方法です。お墓を持つことや、継承が難しいなどの理由で選ばれることが多い供養の形です。
ただし永代供養は、一定期間経過後はほかのご遺骨と合祀され、供養を続けてもらうことが多いです。
どの程度、個別に管理・供養をしてもらえるかは寺院や霊園によって異なります。埋葬先によって年間管理費が発生する場合もあるので、事前に確認しておくことが大切です。
海洋散骨
分骨後の供養として、海洋散骨をする人もいます。海洋散骨は遺骨をお墓や納骨堂等に埋葬せず、海にまいて埋葬する方法です。
散骨を行う場合の注意点は、事前に遺骨を粉砕する必要があることです。遺骨のまま散骨することは法律違反になるからです。
散骨する場所もどこでもいいというわけではなく、守るべきマナーがあります。自分で勝手に行うのは避け、葬儀社や散骨専門業者に相談することをおすすめします。
樹木葬
樹木葬は墓石の代わりに樹木を墓標にして遺骨を埋葬する方法です。樹木葬もお墓の管理・継承が不要なケースが多く、永代供養や海洋散骨などとともに、近年選ばれる機会が増えています。
ただし、樹木葬は墓地の一種なので、樹木があればどこにでも埋葬できるわけではありません。許可された場所以外に埋葬すると、罪に問われることがあるので注意しましょう。
分骨の注意点
親族に了承を得て分骨を行う
分骨をする場合は、事前に親族に了承を得ることが大切です。親族の中には、分骨をよく思わない人もいるかもしれません。慎重に話を進めましょう。
また、遺骨にも所有者が決まっています。所有者が自分ではない場合、自分の一存で勝手に分骨はできません。所有者以外の人が分骨する場合は、事前に所有者の承認を得ておく必要もあります。
本山分骨をするとご遺骨は返還されない
本山分骨を行う場合は、個別に遺骨を返還してもらうことが難しいです。多くの場合、遺骨を一か所にまとめて供養する、合祀の形になるからです。
ペットの遺骨も分骨できる?
法律上は問題なし
愛するペットが亡くなった場合も、分骨をすることは問題ありません。法律上、ペットの以外は一般廃棄物に分類されるため、埋葬方法についての決まりはないためです。廃棄物処理法に違反しなければ、基本的に供養の方法は飼い主の自由となります。
分骨はご遺骨を分けて供養すること
トラブルを避けるために事前に親族間で話し合ってから分骨を
分骨はご遺骨を取り分け、別々の場所に管理・埋葬して供養することです。従来は火葬し、遺骨を骨壺に納めて墓地や納骨堂に埋葬するのが一般的でした。ですが埋葬方法の多様化や生活スタイルの変化、あるいは故人と離れたくないなど理由から、分骨される機会は増えています。
分骨を行う際は、遺骨を別の墓地等に埋葬する場合は分骨証明書を入手しておきましょう。すでに埋葬した遺骨を分骨する場合は石材店や寺院などに連絡が必要です。何より、無用なトラブルを避け、分骨してよかったと思えるように、事前に遺族・親族内で相談し、納得した上で行うようにしましょう。