葬儀と葬式の違い
葬儀と葬式という言葉。同じような意味に感じられますが、果たしてどのような違いがあるのでしょうか。シチュエーションによって使い分けが必要であれば、マナーとして知っておきたいですよね。
今回は、葬儀と葬式、二つの言葉の意味を掘り下げ、違いについて調べてみました。
葬儀と葬式、違いはある?
葬儀と葬式の意味を辞書で調べる
葬儀とは
辞書で調べたところ、葬儀は「死者を葬る儀式、儀礼」と意味づけられており、「葬式」とも書かれています。
葬式とは
葬式についても、辞書には「死者を葬る儀式、弔い」とあり、「葬儀」とも書かれています。
葬儀と葬式はほぼ同じ意味
国語辞典や歴史民俗用語辞典などでは、葬儀と葬式、どちらも死者を葬る儀式や儀礼、弔いといった意味付けがされています。
お互いが類義語の関係でもあることから、言葉の意味として、葬儀と葬式はほぼ同じ解釈がされていると考えられます。
葬儀は死者を葬る作業全体を指すこともある
葬式用語の場合は、「葬儀」という言葉は葬送儀礼の略称であると示されています。
葬送儀礼とは、看取り、納棺、通夜、葬儀、告別式、火葬、納骨、四十九日までの喪に服す期間であり、葬儀前から葬儀後までに行う一連の儀式のことです。
したがって葬儀、という言葉には、死者を弔う儀式としての意味だけでなく、もっと広義の、故人を弔う儀式全体を指す意味も、持ち合わせているといえます。
一方で葬式、という言葉は、あくまで死者を弔う一部の儀式だけを指す言葉と考えていいでしょう。
葬式は、葬儀と告別式とを合わせた言葉
一般的に、亡くなった人を弔うときは、通夜、葬儀、告別式に分けて行います。
葬式という言葉は、「葬儀+告別式=葬式」、つまり葬儀と告別式とを合わせて生まれた言葉、といわれています。
葬儀と告別式、それぞれの持つ意味
葬儀は近親者だけで弔う宗教的儀式
葬儀は亡くなった人の成仏を願い、冥福を祈る宗教的な儀式です。元々は、故人の家族や親族など、親しい人たちだけが集まり、僧侶に読経をあげてもらい、弔う儀式でした。
葬儀には、残された人たちが故人の死を受け入れられるよう、援助する意味もあります。身近な人たちだけで弔ったのは、残された人たちの気持ちをいたわるためだったことも、関係しているのかもしれません。
告別式は故人とゆかりのある人たちがお別れするための社会的儀式
告別式は、血縁や付き合いの浅い、深いにかかわらず、故人と交流のあったすべての人たちが、お別れをするための儀式です。葬儀に比べ、社会的な意味があります。
告別式は本来、遺骨を墓地に埋葬する前に行う儀式でした。
時代の流れとともに葬儀と告別式のあり方も変化
葬儀と告別式とは、元々の意味も、行うタイミングも違うものでした。ですが、時代の流れとともに、現在は葬儀のあとに告別式を引き続いて行うのが一般的になりました。最近では、葬儀と告別式とを一体化して行う、略式のケースも増えています。
同日に葬儀と告別式を行うようになったのは、埋葬方法が土葬から火葬へと変化し、一般の参列者が墓地まで行く機会がほとんどなくなった、ということも関係しているようです。
埋葬方法の変化から、一般参列者のお別れの方法は、以前なら墓地に赴き故人に別れを告げていたのが、現在のようにお焼香をして出棺まで見送る形式が一般的になった、と考えられます。
葬儀と告別式との境界線があいまいに
葬儀と告別式とを同日に行う、もしくは略式で葬儀と告別式とを一体化するケースが増えたことで、近年、両者の境界線はさらにあいまいになっているといえます。
あえて葬儀と告別式とを区別するのであれば、読経が始まり、遺族と親族が焼香をするところまでが葬儀、その後一般の参列者が焼香するところからは告別式、と分けるのが妥当でしょう。とはいえ、実際の葬儀だとあまり意識をすることはないのが実情です。
葬式、という言葉が生まれ、イメージが定着したのは、葬儀と告別式との境界線があいまいになったことが大きく関係しているのではないでしょうか。
葬儀と葬式、言葉の使い分けに明確なルールはない
故人を弔う気持ちを第一に考えよう
葬儀と葬式という言葉は、どちらも死者を弔う儀式である、という部分ではほぼ同義といえます。ただ、葬儀は本来、近親者だけで行った儀式であり、ときには故人を弔う儀式全体を指して使うこともある言葉です。一方で、葬式という言葉は、時代の流れとともに生まれた言葉と考えられます。
それぞれの言葉を、明確に使い分けるための決まりはないので、まずは亡くなった人を弔う気持ちを大切にし、儀式に臨むといいでしょう。その上で、本来の意味や言葉の成り立ちを知っておくと、より知識が深まり、大切な人をしっかり見送ることにもつながるのではないでしょうか。