2025.3.14

葬儀と葬式の違い

葬儀と葬式の違い

「葬儀」と「葬式」は、日常的にはほぼ同じ意味で使われることが多いですが、厳密には異なる概念を指します。両者の違いを明確に理解することで、葬儀の流れや役割についてより深く知ることができます。

葬儀と葬式、違いはある?

葬儀とは?

「葬儀(そうぎ)」とは、亡くなった方を弔い、宗教的な儀式を通じて冥福を祈るための儀式全体を指します。一般的には、僧侶や神職、牧師などの宗教者を招いて行われるもので、故人の霊を供養し、来世への旅立ちを祈願する意味合いがあります。

仏教の場合 僧侶による読経や焼香を行い、故人の冥福を祈る
神道の場合 神職による祝詞(のりと)奏上と玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行う
キリスト教の場合 牧師や神父が聖書を朗読し、祈りを捧げる

葬儀の特徴

  • 宗教的な意味合いが強い
  • 遺族や親族、関係者が集まり、故人を正式に弔う儀式
  • 「告別式」や「火葬」とは異なるが、一連の流れの中に含まれることが多い

葬式とは?

「葬式(そうしき)」とは、故人を弔うために行う一連の儀式の総称であり、葬儀もその一部に含まれます。特に日本では、「葬儀」と「告別式」を合わせて「葬式」と呼ぶことが一般的です。

葬式の特徴

  • 葬儀だけでなく告別式や火葬まで含む場合がある
  • 宗教儀礼だけでなく、社会的な弔いの場としての側面も持つ
  • 一般の参列者が焼香や献花を行う場面も含まれることが多い

葬儀と葬式の違い

項目 葬儀 葬式
意味 宗教的な儀式 故人を弔う一連の儀式全体
範囲 読経や祈りなどの宗教儀礼に限定 葬儀・告別式・火葬などを含むこともある
使われ方 「仏教の葬儀」「キリスト教の葬儀」など特定の宗教儀式を指す 「葬式をする」「葬式に参列する」など一般的な弔いの行為を指す
参列者 遺族や親しい関係者が中心 会社関係者や一般参列者も含まれる

宗教や宗派による「葬儀」「葬式」の使い分け

仏教における葬儀・葬式

日本で最も一般的な葬儀の形式は仏教によるものです。ただし、仏教の中にもさまざまな宗派があり、宗派ごとに葬儀の流れや名称が異なります。

仏教の葬儀の名称

  • 「葬儀」または「葬式」:一般的な用語
  • 「仏式葬儀」「仏式葬式」:仏教式の葬儀であることを明確にする場合
  • 「密葬」:身内だけで行う葬儀
  • 「本葬」:密葬の後に改めて行う正式な葬儀

仏教各宗派の葬儀の特徴

宗派 呼び方 主な特徴
浄土宗 葬儀式 阿弥陀仏の名号(南無阿弥陀仏)を唱える「念仏」が中心
浄土真宗 葬儀・法要 戒名を授けず、「法名」を用いる。読経と念仏が中心
真言宗 葬儀式・灌頂(かんじょう) 密教儀式を伴い、戒名ではなく「阿闍梨号」を与えることも
天台宗 葬儀式 中陰(四十九日)までの法要を重視し、引導法要を行う
臨済宗 葬儀式 坐禅と公案を重視し、「看経(かんきん)」という読経が行われる
曹洞宗 葬儀式 「帰敬式(ききょうしき)」を行い、仏弟子となる儀式が含まれる
日蓮宗 葬儀式 法華経を唱え、故人が成仏できるよう導く

仏教における葬儀の流れ

  1. 通夜(前夜祭にあたる)
  2. 葬儀式(葬儀)(故人を弔う宗教儀式)
  3. 告別式(一般参列者が故人とお別れをする)
  4. 火葬(日本の仏教では火葬が一般的)
  5. 初七日・四十九日法要(追善供養)

※「葬儀」と「葬式」はほぼ同じ意味で使われるが、宗教儀礼としては「葬儀」と呼ぶことが多い。

神道における葬儀・葬式

神道では、故人の霊が穢れ(けがれ)をもたらすと考えられるため、仏教のような供養の概念はありません。そのため、「葬儀」や「葬式」という言葉はあまり使わず、「神葬祭(しんそうさい)」と呼びます。

神道の葬儀の名称

神葬祭(しんそうさい) 神道における葬儀全体を指す
帰幽祭(きゆうさい) 故人の魂が神の世界に入ることを祈る儀式
発柩祭(はっきゅうさい 棺を霊柩車へ移す儀式
葬場祭(そうじょうさい) 仏教の「葬儀」にあたる儀式
火葬祭(かそうさい) 火葬の儀式
霊前祭(れいぜんさい) 死後の霊を慰める儀式
十日祭・五十日祭 仏教の「四十九日法要」に相当

神道の葬儀の流れ

  • 帰幽祭(故人が神の世界に旅立つ)
  • 納棺祭(遺体を棺に納める)
  • 通夜祭(夜通し故人の霊を慰める)
  • 葬場祭(神葬祭)(神職による儀式)
  • 発柩祭(出棺)
  • 火葬祭(火葬)
  • 埋葬祭(お墓に納める)
  • 霊前祭・五十日祭(故人の霊を慰める祭祀)

※神道では「葬儀」というより「神葬祭」「葬場祭」と呼ばれる。

キリスト教における葬儀・葬式

キリスト教では、死は「神のもとに帰ること」とされ、仏教や神道とは異なる考え方を持ちます。そのため、キリスト教では「葬儀」や「葬式」という言葉はあまり使われず、宗派ごとに特有の名称があります。

キリスト教の葬儀の名称

カトリック 「葬儀ミサ(そうぎミサ)」「追悼ミサ」
プロテスタント 「召天式(しょうてんしき)」「記念式」「告別式」

キリスト教の葬儀の流れ

  1. 前夜祭(カトリックのみ)
  2. 葬儀ミサ(カトリック)/召天式(プロテスタント)(神への祈りと説教)
  3. 告別式(遺族や友人との最後のお別れ)
  4. 火葬または土葬(教会によって異なる)
  5. 追悼ミサ・記念式(故人を偲ぶ)

※カトリックは「葬儀ミサ」、プロテスタントは「召天式」と呼ぶことが多い。

その他の宗教における葬儀

イスラム教

  • 「ジャンナザ(ジャナザ)」:イスラム教の葬儀
  • 速やかに埋葬するのが原則
  • 火葬は禁じられており、土葬が基本

仏教以外の東洋宗教(道教など)

  • 道教では、独自の儀式があり「超渡法会(ちょうとはっかい)」と呼ばれる
  • 祖先崇拝を重視するため、儀式が長い傾向がある

それぞれの宗教・宗派で葬儀の目的や儀式の流れが異なり、名称にも違いがあるため、状況に応じて正しい用語を使うことが重要です。

「葬儀」「葬式」の地域や文化による違い

「葬儀」や「葬式」の形態は、日本国内でも地域や文化によって大きく異なります。これは歴史的な背景、宗教の影響、地理的条件、そして地域社会の風習によるものです。以下、日本各地の葬儀の特徴と、文化的な違いについて詳しく解説します。

日本各地における葬儀・葬式の違い

日本の葬儀の基本的な流れ(通夜→葬儀・告別式→火葬→納骨)は全国共通ですが、地域ごとに独特の習慣や儀式が存在します。

東日本(関東・東北・北海道)の特徴

火葬が主流 日本全国的に火葬が主流ですが、特に関東・東北地方ではほぼ100%火葬が行われます。
通夜振る舞い(とおやぶるまい)が盛大 通夜の後に会食をする習慣が強く、親族や参列者をもてなす文化があります。
関東の「骨上げ」 火葬後の遺骨を親族が箸で拾い、骨壺に納める「骨上げ」が行われます。
東北の「野辺送り」 昔ながらの風習として、棺を担いで霊柩車まで運ぶ「野辺送り」が残っている地域もあります。
関東特有の風習
  • 告別式を重視し、多くの参列者が訪れる大規模な葬儀が一般的
  • 通夜・葬儀を1日で済ませる「一日葬」が増加中
東北特有の風習
  • 葬儀後に「精進落とし(しょうじんおとし)」という食事の席を設ける
  • 会葬者に対し「香典返し」を当日渡すことが一般的

西日本(関西・中国・四国・九州)の特徴

関西では「骨壺が小さい」 関東では全身の遺骨を収めるのが一般的ですが、関西では主要な骨だけを収めるため、骨壺が小さい。
「後火葬」が一般的 関西では、葬儀の後に火葬を行う「後火葬」が多い(関東は「先火葬」)。
通夜は簡素化される傾向 関西では通夜は儀礼的に行い、葬儀・告別式を重視する。
関西特有の風習
  • 戒名に「院号」がつくことが多い
  • 通夜振る舞いは簡素で、会食がない場合もある
  • 香典の額が関東よりも高め
中国・四国特有の風習
  • 「水葬」の名残がある地域も(瀬戸内地方など)
  • 香典の渡し方に特徴がある(白黒ではなく黄色と白の水引を使う)
九州特有の風習
  • 長崎の「精霊流し」:お盆に故人の魂を送り出すための儀式
  • 沖縄の「門中墓(もんちゅうばか)」:一族で大きな墓に納骨する風習がある

北海道の葬儀の特徴

本州とは異なる独自の習慣 「告別式」の際に「お別れ会」を開くことが多い。
火葬が早い 寒冷地のため、遺体の腐敗を防ぐ目的で火葬が早く行われる。
会葬者への返礼品が充実 北海道では「会葬御礼」が豪華な傾向がある。

都市部と地方での葬儀の違い

都市部と地方では、葬儀の規模や形式に大きな違いがあります。

都市部(東京・大阪・名古屋など)の傾向

家族葬が主流 核家族化が進み、身内だけで葬儀を行うケースが増加。
一日葬の普及 通夜を省略し、葬儀・火葬を1日で行う形式。
参列者が少ない 親族や親しい友人のみで行うことが多い。

地方の傾向

参列者が多い 地域のつながりが強く、自治体や近隣住民が多く参列する。
村や町内会が葬儀を手伝う 特に農村部では、町内会や組合が葬儀を支援する伝統が残る。
通夜・葬儀が長時間にわたる 葬儀の前後にさまざまな儀式を行うことが多い。

文化的な違いによる葬儀の特色

地域だけでなく、日本の文化的背景によっても葬儀の形態に違いがあります。

歴史的背景による違い

武士階級の影響(関西) 関西では、武家文化の影響で戒名や墓石に格式がある。
商人文化の影響(大阪) 大阪では「簡素な葬儀」が好まれ、見栄を張らない傾向。
農村部の共同体文化 村社会では、近隣住民が協力して葬儀を執り行う。

宗教観による違い

仏教葬儀が圧倒的に多い 日本の約9割の葬儀が仏教式で行われる。
神道・キリスト教の葬儀は地域差がある 関西は神道が比較的多く、都市部ではキリスト教葬も増加傾向。

高齢化社会と葬儀の簡素化

直葬(火葬のみ)の増加 都市部では、経済的負担を軽減するため、葬儀を省略し火葬のみ行うケースが増えている。
オンライン葬儀の普及 コロナ禍を経て、遠方の親族がオンラインで参列するケースが増加。

近年、葬儀形式が多様化している

近年の葬儀形式の多様化の背景

葬儀のスタイルが多様化した背景には、次のような要因が挙げられます。

核家族化・独居世帯の増加

かつては三世代同居が一般的であり、地域のつながりも強かったため、盛大な葬儀が行われることが多かった。しかし、核家族化が進むことで、遺族の数が減り、家族葬や直葬など、身内だけで行う小規模な葬儀が増えている。

経済的負担の軽減志向

一般的な葬儀には100万~200万円以上の費用がかかることが多く、経済的負担が大きい。そのため、コストを抑えたシンプルな葬儀形式(直葬・一日葬)が注目されている。

宗教観の変化

従来の仏教式葬儀にこだわらず、無宗教葬や自由葬を選ぶ人が増加。特定の宗教儀式を行わない葬儀形式が広まりつつある。

コロナ禍による影響

感染症対策として、大規模な葬儀が避けられるようになり、オンライン葬儀や家族葬が増加。通夜を省略し、1日で済ませる形式も一般的になった。

代表的な新しい葬儀形式

近年増加している葬儀のスタイルには、以下のようなものがあります。

家族葬

概要 親族や親しい友人のみで行う小規模な葬儀
参列者数 10~30名程度
特徴 一般の会葬者を招かないため、故人との最後の時間をゆっくり過ごせる
費用は従来の葬儀よりも安価(平均50~100万円)
香典や供花を受け取らないケースが多い
会社関係者や近隣住民との関係が薄い人に向いている

直葬(ちょくそう)

概要 通夜や告別式を行わず、火葬のみを行う葬儀形式
参列者数 基本的に遺族のみ(1~5名)
特徴 費用が非常に安い(10万~30万円程度)
宗教儀式を省略するため、信仰にこだわらない人に向いている
火葬場の都合で、火葬まで数日待つ場合がある

一日葬

概要 通夜を省略し、告別式と火葬を1日で行う葬儀形式
参列者数 10~50名程度
特徴 通夜の負担を減らし、1日で葬儀を終えられる
費用は通常の葬儀より安価(50~100万円)
親族の負担が少ないため、高齢者にも選ばれやすい

直葬+後日お別れ会

概要 火葬のみの直葬を行い、後日、親族や友人を招いて「お別れ会」を開く形式
特徴 火葬は少人数で静かに行い、後日改めて関係者と故人を偲ぶ機会を持つ
ビジネス関係者が多い人や、全国に知人がいる人に適している
お別れ会はホテルやレストランで行うことが多い

自由葬(無宗教葬)

直葬+後日お別れ会

概要 特定の宗教儀礼にとらわれず、故人の意向に合わせた葬儀
特徴 宗教的な読経や説教がなく、音楽やスピーチを中心に進行
形式にとらわれず、個性的な演出が可能
無宗教の人や、自分らしい葬儀を希望する人に向いている

宇宙葬・樹木葬・散骨

直葬+後日お別れ会

概要 遺骨を自然に還す新しい形の供養
種類 樹木葬:墓石の代わりに樹木を墓標とする形式
海洋散骨:遺骨を粉末化し、海に撒く供養
宇宙葬:遺骨をロケットに乗せ、宇宙に送る
特徴 従来の墓を持たないため、管理の手間がかからない
環境志向の人や、お墓を持ちたくない人に適している

葬儀の新しい形

オンライン葬儀

  • コロナ禍を契機に普及
  • 遠方の親族や高齢者がインターネット経由で参列可能
  • 費用を抑えつつ、多くの人が参加できる

デジタル供養

  • 故人の写真や動画をデジタル保存し、オンラインで偲ぶ
  • AIを活用した「バーチャル法要」も登場

近年の葬儀多様化の影響

葬儀業界の変革 従来の葬儀社は家族葬やオンライン葬儀に対応
宗教離れの進行 仏教式にこだわらない葬儀が増加
経済的負担の軽減 直葬・一日葬が普及し、費用を抑えた選択肢が増える

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