菩提寺とは?菩提寺の意味やメリット・デメリット、葬儀時の連絡方法
菩提寺というとお世話になっているお寺のイメージがありますが、どんなお寺を指すのでしょうか。葬儀の流れの中でも、菩提寺という言葉は出てくるので、意味や由来は知っておきたいところです。今回はこの記事で、菩提寺の概要やメリットやデメリット、注意点や葬儀時の連絡方法についてご紹介します。
菩提寺とは?
先祖代々のお墓や位牌があるお寺
菩提寺(ぼだいじ)とは先祖代々のお墓があり、位牌を祀るお寺のことです。菩提寺は菩提所、菩提院、氏寺(うじでら)、香華院(こうげいん)などと呼ばれることもあります。
菩提寺を歴史的に見ると、古代・中世は主に公家が一門の菩提寺として建立し、氏寺(うじでら)や墳寺(ふんじ)と呼ぶのが一般的でした。その後、武士も菩提寺を持つようになり、近世になると菩提寺と呼ぶのが一般的になったようです。
江戸時代になると寺請制度や寺内墓地などの影響から、一人ひとりが菩提寺を持つようになり、現在に至ったとされています。
寺請制度とは、家単位で一人ひとりが特定の寺院の檀家となり、葬儀からお墓まで葬祭供養のすべてを寺院に依頼し任せる代わりに、寺院に対して経済的支援を行う制度です。寺請制度は代々同じ寺院に所属し、同じ宗派に帰依してお墓を定めるのが基本とされました。
葬儀や法事をお願いする寺院
菩提寺は葬式や法事の際にお世話になる寺院でもあります。戒名も菩提寺にお願いするのが基本です。
菩提寺と檀家、檀那寺の違いは?
檀家はお墓に入る前に、そのお寺の宗派に属すること
檀家はお墓に入る前に、そのお寺の宗派に属することをいいます。檀家になることによって、そのお寺が自分の菩提寺となり、葬儀でお世話になることや、定期的に行われる法要などにも参加できるようになります。
生きている人がお世話になる寺が檀那寺
菩提寺の意味を調べると、檀那寺が同義語として出てくることがあります。菩提寺も檀那寺も、葬儀や故人の供養をお願いするお寺ではありますが、厳密には意味合いが異なります。
菩提寺は先祖代々のお墓や位牌をお祀りし、亡くなったあと、葬儀や法事などでお世話になるお寺です。「菩提を弔う」との言葉があるように、いわば死者を弔い供養をお願いするお寺といえるでしょう。
一方、檀那寺は檀家(檀信徒)のお布施、つまり檀那によって運営されるお寺で、今生きている人がお世話になっているお寺を意味します。
元々、檀那寺という言葉は、檀家とお寺との経済的関係を示すにすぎませんでした。ですが、江戸時代に行われた寺請制度により、個人が1つのお寺に管理されるようになったことで、「経済的支援をするお寺(檀那寺)=先祖の墓を管理してもらうお墓(菩提寺)」と一致するようになりました。
菩提寺と檀那寺は、葬儀や供養をお願いする同じ1つのお寺といえます。ですが、呼び方として、亡くなった人やご先祖様の立場から見た場合は菩提寺、今生きている自分たちからみた呼び方は檀那寺になると考えられます。
菩提寺の持つ意味
「菩提」は悟りや目覚めを意味する言葉
菩提寺は文字通り、故人の菩提を弔う寺院であり、「菩提」には「死後の冥福」や「煩悩のない、安らかな悟りの境地」との意味合いがあります。
「菩提」の語源はサンスクリット語(梵語)の「ボーディ(悟り、目覚め)」の発音に漢字をあてはめたものといわれています。
家族や親しい人が亡くなった後に「お釈迦様のように悟られますように、目覚められますように」との思いを込めて建てられたお寺が、菩提寺の成り立ちとされています。遺族にとっては亡くなった人のお墓があり、冥福を祈ることができる、心のよりどころとなる存在といえるでしょう。
菩提寺があることのメリット
葬儀や法事、戒名などを依頼できる安心感
菩提寺があると、葬儀や法事、戒名を依頼できる安心感があります。不幸は突然訪れることもありますが、菩提寺があれば仏事で分からないことも相談しやすく、不安も減らせるでしょう。
菩提寺があることのデメリット
檀家としての付き合いやお布施が必要
檀家になると、檀家の立場で菩提寺と付き合う必要が出てきます。例えば、普段から菩提寺の行事ごとに参加したり、葬儀や法事などはすべて菩提寺が属する宗派の作法や宗教儀礼に則って行うなどです。
葬儀・法事以外でも、お参りの際や菩提寺の修繕などのタイミングでお布施を包み、菩提寺の運営を支えることにもなるでしょう。
菩提寺が遠方にあると付き合いが減りやすい
近年は社会的な変化から、菩提寺と物理的に離れた場所で生活することが人が増えています。菩提寺が遠方にあればあるほど、お参りする機会や菩提寺との付き合いも減りやすいです。
日頃の付き合いが少なくなるほど宗派への理解が進まなかったり、いざというときに頼りにくくなるかもしれません。人によっては菩提寺がどこかさえ分からず困る場合もあるようです。
どんな葬儀にする場合でも一言連絡が必要
近年は宗教儀礼にとらわれず葬儀を行う人や、直葬で葬儀を終える人が増えています。お墓の引っ越しや墓じまいをするケースも増えていますが、菩提寺がある限りは、葬儀の際は一言連絡を入れるのが礼儀です。
菩提寺があるのに連絡しないとトラブルになることも
葬儀の際に菩提寺に連絡をするのは、後々トラブルが起こるのを防ぐためです。よくあるトラブルは、ご遺骨を先祖代々のお墓に納骨できなかったり、戒名の付け替えを要求されるなどの問題です。
例えば、菩提寺が遠方にあるからと連絡をせず、葬儀社に別の宗派の葬儀や僧侶の手配を依頼して、戒名をつけてもらったとします。寺院墓地は同じ宗派以外の人は納骨できない規則になっていることが多いため、菩提寺に納骨を断られることがあります。そのままだと宗派の違う戒名がついているためです。
菩提寺が遠方にあるとしても、納骨を菩提寺にする予定なら必ず連絡しましょう。事前に相談さえすれば、戒名は葬儀後に改めてつけてもらえることも多いはずです。
葬儀を行う際の菩提寺への連絡
菩提寺が近くにある場合
葬儀を行うことになった場合、菩提寺が近くにある場合はすぐに連絡して僧侶の都合を伺いましょう。スケジュールが問題なければ枕経に来てもらい、その場で葬儀の段取りをするのが一般的です。枕経を行わない場合は、連絡をした際に僧侶のスケジュールを確認し、葬儀日の目安を伝えるといいでしょう。
菩提寺が遠方にある場合
菩提寺が遠方にある場合も、まずは連絡してスケジュールを伺いましょう。僧侶の都合が合う場合は、遠方でも来てもらえることが多いです。葬儀の段取りも合わせて打ち合わせするといいでしょう。
どうしても僧侶の都合がつかない場合も、菩提寺から同じ宗派で近隣の寺院や僧侶を紹介してもらえることが多いです。紹介してもらう場合、戒名をいただくタイミングについては、事前に菩提寺からつけてもらうか、葬儀は俗名のままで行って納骨までに菩提寺に戒名をつけてもらうのが一般的です。不安な場合は合わせて相談しておくといいでしょう。
菩提寺が分からない場合の葬儀は?
戒名を確認する
葬儀を行うにあたり、菩提寺が分からない場合の対処法として、まずは戒名を確認しましょう。戒名は宗派ごとに使用される漢字が異なる場合があるためです。お寺の名前はわからなくても、宗派がわかれば同じ宗派の寺院に依頼でき、後から菩提寺が分かった場合も、納骨トラブルなどリスクを減らせるでしょう。
親族に確認する
菩提寺が分からないときは戒名を調べるのに加え、親族に確認するのも有効な手段です。親族同士で同じ菩提寺の場合もありますし、違う場合も年配の親族ならお寺の名前を知っている可能性があるでしょう。
地元周辺の寺院に問い合わせる
菩提寺の探し方として、地元周辺の寺院に故人の名前を告げ、問い合わせる方法もあります。地道な方法で手間はかかりますが、1つひとつ当たっていけば見つかる可能性はあるでしょう。その他、親族と宗派が同じで、親族の葬儀に来ていた僧侶と知り合いであれば尋ねてみてもいいかもしれません。
菩提寺がない場合は葬儀社に相談を
菩提寺がどうしても分からない場合や、そもそも菩提寺がない場合は、葬儀社に相談しましょう。葬儀の準備とともに、僧侶の手配や紹介も依頼できるのが一般的だからです。ただ、葬儀社によっては紹介料が発生することもあるので、確認してから依頼するほうがベターです。
菩提寺は先祖代々お世話になっているお寺
菩提寺がある場合は葬儀の際に必ず連絡を
菩提寺は先祖代々のお墓があり、位牌を祀るお寺であり、檀家になることで、初めて菩提寺としての存在になります。
菩提寺があると葬儀や法事などでお世話になることや、仏事の分からないことを相談できます。ご先祖様や故人、また自分たちの死後の供養をお任せできるお寺があることも、安心につながるでしょう。一方、檀家として普段から行事ごとに参加したり、お布施をするなどの付き合いも必要になります。
近年は菩提寺が遠方にあり、葬儀の際困ることや納骨時にトラブルになるケースも増えています。ですが、菩提寺がある限りは宗派の教えを理解するように努めることが大切です。僧侶とも定期的な交流をはかりながら、いざというときに困らないようにしましょう。