お墓参りの正しい作法~流れと持ち物・服装、守るべきマナー
お墓参りは年に何度か行っていても、いつもなんとなくお参りしているという人も多いのではないでしょうか。お参りをする上で、お墓参りをするべき時期やタブーがあれば知っておきたいですよね。今回はこの記事で、お墓参りの一般的な作法や必要な持ち物、お参りの際の注意点などについてご紹介します。
お墓参りの一般的な作法・手順
- お墓が寺院墓地にある場合は、お墓参りをする前に本堂へのお参りと、ご住職に挨拶をしてからお墓へ向かいます。お彼岸の時期にお参りする場合は、寺院で「彼岸会法要」が行われていることが多いです。時間の余裕があれば法要にも参加するほうがベターです。
- お墓に到着したら合掌をして、掃除を始めます。枯葉やゴミを拾い、墓石の汚れを落とします。掃除の最後は手桶にきれいな水を汲み、ひしゃくで墓石に打ち水をして清めます。
- 花立てと水鉢(墓石中央のくぼみ)に水を入れ、お花やお供え物を供えます。地域によってはローソクを立てる場合もあります。
- 複数人でお参りしているときは故人と近しい間柄の人から順にお参りします。お線香をあげ、火を消さないよう注意しながら墓石に水をかけ、合掌します。
五供のお供えと合掌が基本
お墓参りは五供をお供えし、合掌するのが基本とされています。合掌するときは胸の前で左右の手のひらをぴったり合わせ、軽く目を閉じ、頭は30℃ほど傾けます。数珠を持っていれば手にかけます。お墓参りはご先祖様の供養とともに、故人に語り掛ける場でもあります。合掌している間は感謝の気持ちを伝えたり、近況報告を行ってもいいでしょう。短い題目を唱える人もいます。
お墓参りの五供
五供とは香・花・灯燭・浄水・飲食のことです。ただし、宗派によってお供えするものが異なることもあります。五供は5つすべてをお供えできれば理想ですが、気持ちさえあれば用意できるものだけでもかまいません。まずは故人やご先祖様を思い、手を合わせることが大切だからです。
香
五供の香はお線香のことです。一説によるとお線香の香りには、心身や場所を清める働きがあり、仏様やご先祖様の食事であるともいわれています。
花
お花も五供のひとつです。美しく、清らかなお花を飾ることは、供養になるだけでなくお参りする人の心を穏やかにする意味もあるとされています。
灯燭(とうしょく)
灯燭はお墓におけるロウソクや石灯籠のことです。煩悩を打ち消し、明るく照らす光の象徴とされ、火を灯すこと自体がお供えになるといわれています。ただし、石灯籠の場合は実際に火を入れることはありません。また、近年は墓石の小型化により、石灯籠を置くスペースが省略されていることも増えています。
浄水
浄水とは清らかな水のことです。新鮮なお水を水鉢(墓石中央のくぼみ)に張ることで、お墓参りをする人の心が洗われるとの意味合いがあります。
飲食(おんじき)
飲食は、仏壇にご飯を供えるように、私たちが普段食べているものと同じものをお供えすることです。お墓参りでは、故人の好きだったものや季節の食べ物をお供えするのが一般的です。飲食はお参り後に持ち帰ります。故人やご先祖様とのつながりを表すためです。
お墓参りに必要な持ち物
お墓周りの掃除道具
お墓参りには掃除用具を持参しましょう。墓石の汚れ落としには、ぞうきんや柔らかめのスポンジを使うのがベターです。タワシや歯ブラシだと石のツヤまでこすり落とし、傷をつけてしまうことがあるからです。ただし、タワシや歯ブラシも墓石の文字が刻まれている部分など細かいところの汚れを落とすのには便利です。墓石回りの環境を整えるために、必要であればカマや植木ばさみ、シャベルなども持参しましょう。墓石回りに砂利が敷かれている場合は、ザルを使うときれいにしやすいです。
- ぞうきん、柔らかめのスポンジ
- タオル(墓石の水をふき取る)
- バケツ
- ほうき、ちりとり
- タワシ、歯ブラシ
- 軍手、ごみ手袋
- カマ、植木ばさみ
- ゴミ袋
- シャベル、ザル
手桶やひしゃく
墓石の打ち水をするのに手桶やひしゃくも必要です。寺院墓地や霊園では、管理事務所が手桶やひしゃくの貸出をしていたり、預かってもらえることがあるので、事前確認しておくと安心です。手桶やひしゃくを借りる場合は、名前や家紋が入っているものは専用なので使用しないように気を付けましょう。
お供え
お墓参りにはお供えと半紙も持参しましょう。半紙はお供え物を乗せるためです。お供え物については果物やまんじゅう、羊羹といった生菓子、落雁などが一般的でしたが、現在は季節の食べ物や故人が好きだった食べ物、飲み物などをお供えすることが多いです。スーパーなどでお供え用に販売されているお菓子や、普段のご飯でもかまいません。ただし、宗派によってはお盆やお彼岸はお供えするものが決まっていることもあります
お線香
お線香は束のまま持っていきましょう。一緒にお参りする人と分けたり、地域によっては束のままお供えすることもあります。お線香の種類は問いません。故人が好きだった香りや色のお線香を選ぶのもひとつです。
ローソク、ライター、マッチ
お線香とともに、ライターやマッチなど着火剤も用意しましょう。ライターは雨風が強いときでも使いやすい風防ライターが便利です。マッチを使う場合は火消し用の水や容器も忘れずに準備しましょう。
着火剤を準備するときはできればローソクも用意しましょう。現在はマッチやライターから直接お線香に火を灯すことが多いですが、本来はマッチやライターでローソクに火を灯してから、お線香に火を移すのが正式とされています。ローソクの種類は問いませんが、お盆やお彼岸、命日など仏事では白ローソクを使うのが基本です。お墓にローソク立てがある場合はそのままお供えするといいでしょう。
友人・知人としてお墓参りをするときも、お供え物とともにお線香や着火剤は持参しましょう。
お花
お墓参りには花立ての数分のお花も準備しましょう。一般的にお墓の花立ては対になっているので、同じ束を2組ずつ用意することになるでしょう。お花はなるべく直前に用意するのがおすすめです。あまり何日も前から準備しすぎると、お花が傷みやすくなるからです。霊園や寺院によっては販売していることもあります。
用意するお花の種類に決まりはありませんが、トゲがなく、匂いや花粉の少ないものがベターです。一般的に菊のような日持ちのするお花を準備することが多いですが、故人が好きだったお花で揃えてもいいでしょう。生花店やスーパーで仏花として売られているものを持参してもOKです。
お花を供えるときは、花立てに水を入れ、お花の長さやバランスを花ばさみで整えましょう。お花の正面はお墓参りする人に向かうように飾ります。
また、一般的に生花を飾りますが、寺院や霊園によっては、鳥などに荒らされないよう造花を供えることが決められている場合もあります。念のため確認してから用意するほうがいいでしょう。
数珠
数珠はお墓参りの必需品ではないものの、持参するのが一般的です。数珠は宗派によって形が異なりますが、どなたのお墓参りでも自分の宗派の数珠を試用して問題ありません。
お墓参りをする時期
お墓参りをする時期には決まりなし。いつでもOK
お墓参りをする時期や頻度に決まりはありません。反対に、お墓参りをしてはいけない時期もありません。いつでも「お墓参りがしたいな」と思ったときにお参りするといいでしょう。
命日やお盆などを機会にお参りを
お墓参りをする時期に決まりはないですが、一般的にはお盆や春・秋のお彼岸、命日、法事・法要など仏事に合わせて行く人が多いです。特にお盆は昔からご先祖様が家に帰ってくるとされ、一年の中でもお墓参りをする人が多い時期です。
お墓が遠方にある場合は、年末年始やゴールデンウィークなど、長期休暇で帰省するのに合わせて訪れる人も多いようです。その他、結婚や出産、進学や就職、引っ越しなど、人生の節目のタイミングでお墓参りをする人もいます。
お墓参りを避けたほうがいい時間帯
夕方以降は避けたほうが無難。午後は早めにお参りを
お墓参りをしてはいけない時期はありませんが、一日のうち夕方以降は避けたほうがいい時間帯といわれています。夕方は昔から「逢魔が時(おうまがとき)=魑魅魍魎が動き出す時間」といわれているからです。お墓のある場所は外灯や人気が少ない場所も多く、転倒する危険もあります。できれば午後も早めにお墓参りをすませるほうがいいでしょう。
お墓参りの服装
通常はカジュアルな服装でもOK
お墓参りの服装についても、明確な決まりはありません。普段のカジュアルな服装でいいでしょう。お墓参りは「故人に会いに行く」感覚で行ってもかまわないからです。
とはいえ、お墓掃除をしやすいように動きやすい服装で、あまり派手な色やデザインのものは避けたほうが無難です。墓地や霊園は芝生や砂利道など歩きにくい場所も多いので、ヒールの高い靴やピンヒールなどよりは、歩きやすい靴のほうがおすすめです。
お坊さんを読んで法要を行うなら礼服や黒スーツ
通常はカジュアルな服装でかまいませんが、僧侶を招くときはきちんとした服装に整えます。例えば、法要でお墓参りをするときは礼服や地味な色のスーツを着用するのがマナーです。
お墓参りで気を付けたいマナー
火の始末はしっかりと
お墓参りをするときは火の始末に注意しましょう。ローソクの火は火災の原因になりやすいので必ず消しましょう。お線香は放置して燃やしきることが多いですが、霊園によっては火を消すよう決められていることがあります。ルールに従って行動しましょう。
火は手で扇いで消す
お墓参りでお線香やローソクの火を消すときは、手であおいで消すのが基本です。人の口は悪業を積みやすく、けがれやすいため、仏様にお供えする火がけがれるのを防ぐためです。
お酒をかけるのは控えたほうがベター
墓石にお酒をかけるのは、変色やシミ、サビの原因になるので避けたほうが無難です。もしお酒をお供えするのであれば、器に注いでからにしましょう。
お墓がある場所の決まりに従うこと
墓地や霊園にはそれぞれルールが定められています。例えばペットの入園不可、開園時間を守る、他にお墓参りをしている人に配慮することなどです。それぞれの規則に従って行動しましょう。
お供え物は持ち帰るのが基本
お墓参りではお参りが終わったあと、基本的にお線香とお花以外のお供え物は持ち帰ります。墓石の変色や、カラスや野良犬などに食い散らかされるのを防ぐためです。持ち帰ったお供え物は自宅でいただきましょう。
宗教・宗教ごとの作法や地域の慣習にならう
お墓参りの仕方には明確な決まりはないものの、お線香の本数や折る・折らない、立てる・寝かせる、合掌したときに唱えるお題目などは宗派によって異なります。宗派の違い以外にも、地域や家族ごとの慣習やしきたりがある場合は従いましょう。
お墓参りに行けないときは?
故人を想い、手を合わせるだけでも供養
お墓参りに行けないときは、故人を思って、手を合わせるだけで十分供養になります。お墓参りは故人に会いに行くような気持ちで、見守ってくれることへの感謝や近況を伝えることが大切だからです。お墓に行けなくても、心の中で故人に語り掛けるだけでも気持ちは伝わるでしょう。
お墓参りの代行業者を利用する
いくら手を合わせるだけでいいといっても、お墓参りをしなければお墓の管理など実務的な目的を果たすことはできません。事情があってどうしてもお墓参りができない場合は、お墓掃除やお墓参りを代行してくれる業者を利用するのもひとつの手段です。自治体によってはふるさと納税で代行をしてもらえることもあるようです。
お墓参りは故人の冥福を祈り、感謝すること
機会を見つけてお参りを
お墓参りの基本は手を合わせ、五供のお供え物をするのが基本ですが、お参りの仕方にハッキリとしたルールはありません。一般的な作法を頭に入れ、お墓参りする先の宗派やその家の慣習、霊園・墓地の規則に従うのがいいでしょう。大事なことは手を合わせて故人を思うことです。お盆やお彼岸だけでなく、思い立ったときにいつお参りしてもかまわないので、あまり堅苦しく考えすぎず、故人に会いに行く気持ちで足を運んでみてはいかがでしょうか。