2018.3.30

宗教・宗派によって葬儀に違いがある

宗教・宗派によって葬儀に違いがある

葬儀は宗教・宗派ごとに違いがあり、独自の儀式や作法によって執り行います。
今回は、仏式葬儀をはじめとする宗教ごとの葬儀の特徴とともに、仏教の宗派ごとの葬儀の特徴をご紹介します。

宗教・宗派ごとの葬儀の違い

葬儀の違いは死生観の違いが表れる

葬儀には仏教や神道など、信仰する宗教や宗派に基づいた葬儀形式があります。葬儀の目的や実際の流れ、作法なども、それぞれの宗教や宗派によって異なります。
葬儀に違いが生まれるのは、それぞれの宗教・宗派ごとに、死生観が違うことが影響していると考えられます。死生観とは、生や死に対する考え方のことです。

宗教別でみる葬儀の特徴

宗教別の葬儀は、主に仏教、神道、キリスト教による葬儀形式がありますが、現在日本で行われる葬儀のうち、9割は仏式葬儀といわれています。宗教別葬儀以外にも、最近は宗教にこだわらない葬儀を行う人も増えています。

  • 仏式葬儀
  • 神式葬儀
  • キリスト教式葬儀
  • 無宗教式葬儀

宗教別葬儀の特徴(1)仏式葬儀

故人の成仏を祈り、弔う儀式

仏教では、亡くなった人は来世で仏様の弟子になるとされています。仏教を元に行う仏式葬儀では、故人の成仏を祈り、極楽浄土へ見送ることを目的に、葬儀を行います。
仏式葬儀を行う場所は、自宅を始め、寺院、葬儀場(斎場)とさまざまで、遺族や親族、参列者の数や交通の利便性などを考えて選ばれます。
仏式葬儀では、通夜、葬儀・告別式を行います。葬儀と告別式とは、本来別々の日に行う儀式でしたが、最近は同日に行うのが一般的です。

葬儀で読経をあげ、お焼香をするのは各宗派共通

通夜や葬儀・告別式の流れは、宗派ごとに異なるものの、僧侶が読経をあげ、遺族や親族、参列者がお焼香をするのは共通です。

宗教別葬儀の特徴(2)神式葬儀

亡くなった人は守り神になるという考え方

神式葬儀は神道にのっとった葬儀です。神道では、人は亡くなったあと、他のご先祖様の霊魂と一緒に家にとどまり、家族の守り神(氏神)になるという考えられています。神式葬儀は、故人の霊を家にとどめるための儀式、という目的で行います。
亡くなった人は守り神になって自分たちの周りで見守っていてくれる、という考え方なので、神式葬儀では成仏、冥福、供養といった言葉は用いません。
神式葬儀は、自宅か葬儀場(斎場)で行います。神道では、死はけがれとされているため、神様の聖域である神社で行うことはありません。
葬儀は、仏式の通夜にあたる通夜祭と、葬儀・告別式にあたる葬場祭を行うのが一般的です。

神式葬儀では身を清め、玉串を故人に捧げる

神式葬儀では儀式の前に身を清める手水の儀を行い、お焼香のかわりに玉串奉奠を行うのが特徴です。玉串とは、榊の小枝に紙垂(しで)と呼ばれる独特の形の紙をつけたものです。地域によっては、雅楽の献曲も行います。
仏式葬儀の通夜ぶるまいや精進落としにあたる会食の席として、直会も行います。

宗教別葬儀の特徴(3)キリスト教式葬儀

死は永遠の命の始まり

キリスト教において、死は永遠の命の始まりといわれ、死ぬことは喜ばしいことと考えられています。
人は亡くなったあと、神様に召されて天国で安息を得ることができるといわれているからです。神式葬儀とは少し違いますが、キリスト教でも死ぬことは決して不幸な出来事ではないという考え方なので、お悔やみの言葉は言わないのが特徴です。
ほかにも、キリスト教には本来「通夜」という概念はありません。ただ、日本では通夜にあたる儀式を行うことが多く、独自の文化が出来上がっています。

葬儀では、歌と祈り、献花をささげる

キリスト教式葬儀では、聖歌や讃美歌を斉唱すること、神父や牧師によるお祈り、聖書の朗読、お焼香ではなく献花を行うのが特徴です。
葬儀は自宅か教会で行うことが多いですが、最近は葬儀場(斎場)で行うことも増えています。

カトリック派のキリスト教式葬儀

キリスト教の宗派は、大きく分けてカトリック派とプロテスタント派があり、葬儀の作法も若干異なります。
カトリック派の葬儀の目的は、故人が亡くなったあと、遺族が故人の罪を詫びて神様に許しを請い、永遠の命を祈ることにあり、基本的に洗礼を受け、信者となっていなければ行うことができません。聖職者のことは神父と呼び、礼拝では聖歌を歌います。
カトリック派では、通夜にあたる儀式として、通夜祭と呼ばれる儀式を行い、葬儀と告別式とは別々に行うことが多いです。

プロテスタント派のキリスト教式葬儀

プロテスタント派では、人は死後天に召され、神様に委ねられるという考えのもと、葬儀は故人の冥福ではなく、神様への感謝と遺族を慰めるために行います。
プロテスタント派の聖職者は牧師と呼び、礼拝では讃美歌を歌います。
葬儀では、通夜にあたる儀式として前夜式を行い、葬儀と告別式は分けないことが多いです。
プロテスタント派はカトリック派に比べ、柔軟な考え方があり、洗礼を受けていない人でもキリスト教式葬儀をあげることができることがあります。

宗教別葬儀の特徴(4)無宗教式葬儀

宗教・宗派にとらわれない自由な葬儀形式

最近は都市部を中心に、無宗教式と呼ばれる、宗教や宗派にとらわれず、宗教者も呼ばずに参列者だけで故人を見送るという葬儀形式を選ぶ人も増えています。
無宗教式葬儀を選ぶ人が増えた一因には、菩提寺の付き合いがない、信仰を持たないなどの理由から、宗教から疎遠になる人が多いことが関係しているといわれています。
無宗教式葬儀では、読経や祈りなどの代わりに黙とうをささげることが多いです。ほかにも、故人が好んだ歌や曲を演奏するなど、ほかの葬儀に比べ自由度が高く、故人や遺族の遺志を反映しやすいのが特徴です。
ただし無宗教式葬儀は決まりごとがない分、親族、特に年配の人には理解が得られにくいこともあります。行う際は事前に親族間でしっかり話し合いをしておくことが大切です。

宗派ごとに異なる葬儀の作法

日本に仏教の宗派は13宗56派ほどあるとされます。
同じ仏教という宗教を元にしていますが、それぞれの宗派によって、葬儀の作法は異なります。今回は、仏教の宗派の中でも、主だった7つの宗派の葬儀の特徴や、お焼香とお線香の作法をご紹介します。お焼香の作法で「押しいただく」というのは、額の高さまで手を持ち上げることです。

  1. 天台宗
  2. 真言宗
  3. 臨済宗
  4. 曹洞宗
  5. 浄土宗
  6. 浄土真宗
  7. 日蓮宗

宗派ごとの葬儀(1)天台宗

天台宗は1200年ほど前に、比叡山に伝教大師最澄が開いた宗派です。
天台宗の葬儀は、法華経と阿弥陀経の読経や、故人を仏の世界へと導くための引導を行い、お経は抑揚や節をつけて念仏を唱えるのが特徴です。通夜では導師によって故人の頭に剃刀をあてる「剃度式」を行うこともあります。葬儀ではお題目に「南無阿弥陀仏」を唱えることが多いです。

作法 回数
お焼香 特に決まっていない(1~3回)
お線香 3本

宗派ごとの葬儀(2)真言宗

真言宗は、高野山に弘法大師空海が開いた宗派です。真言宗は大日如来をご本尊とし、教えを外に漏らさない密教で、即身成仏の教えを根本に持ちます。お題目は「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」を唱えます。
真言宗の葬儀は、密教法具を使ったり、真言・陀羅尼を唱える、複雑な印を組むなど独自の雰囲気があります。お焼香のあと、導師が最後に故人が浄土へ行くための「導師最極秘印」という印を組み、三度指を鳴らすのも特徴です。
通夜のときも、故人の身に着ける死に装束にも真言を書き込んだり、ご遺体に曳曼荼羅や覆曼荼羅という布を敷いたりのせることがあります。

作法 回数
お焼香 押しいただいて3回
お線香 3本

宗派ごとの葬儀(3)臨済宗

臨済宗は禅宗のひとつで、お釈迦様の心を身に体して生活することを目的とし、師から弟子へと教えを伝える「看話禅(かんなぜん)」を行うのが宗派の特徴です。
臨済宗の葬儀では、故人を仏弟子にするための「授戒」や、仏の世界に導き入れる「引導」を中心に行いますが、地域によって細かい内容が異なるようです。
お題目は「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」を唱えます。

作法 回数
お焼香 1回(押しいただく・いただかないの定めはない)
お線香 1本

宗派ごとの葬儀(4)曹洞宗

曹洞宗は道元が開いた宗派で、臨済宗と同じく禅宗のひとつです。臨済宗と異なり、座禅はひたすら壁に向かって行う、「黙照禅(もくしょうぜん)」が特徴の宗派です。
葬儀では、臨済宗と同じく故人に仏弟子となるための戒律を授ける「授戒」と「引導」を中心に行います。ですが、地域差によって、細かい部分で内容が異なることもあるようです。
お題目は「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」を唱えます。

作法 回数
お焼香の作法 2回(1回目押しいただき、2回目は押しいただかない)
お線香の作法 1本

宗派ごとの葬儀(5)浄土宗

浄土宗は法然上人が開いた、「無阿弥陀仏」を唱えれば救われ、極楽往生で修業すれば成仏するという考えの宗派です。
浄土宗の葬儀は、お釈迦様に送り出され、故人が極楽浄土に行けるようにと願って行われます。元々浄土宗の葬儀は簡素な儀式だったようですが、現在はほかの宗派と同じく「授戒」や「引導」が加わった形の葬儀が行われることが多いです。

作法 回数
お焼香の作法 押しいただいて1~3回
お線香の作法 1本

宗派ごとの葬儀(6)浄土真宗

浄土真宗は親鸞聖人が開いた宗派で、浄土宗と同じく「南無阿弥陀仏」をお題目に唱えます。
浄土真宗の葬儀の目的は、「死者への供養ではない」ことが大きな特徴です。浄土真宗の信者(門徒)は、死とともに阿弥陀仏により極楽浄土に迎え入れられるので、成仏を祈る必要がないからです。礼拝の対象も、阿弥陀仏であり、故人ではありません。
葬儀の流れでも、他の宗派のように「授戒」や「引導」を行うことはありません。ほかにも、死に装束や清め塩も用いないのが一般的で、普段のお参りの作法や、供物の供え方も他の宗派とは異なることがあります。
浄土真宗の葬儀に参列する立場になるときは、弔電や弔事での言葉も「冥福を祈る」、「お祈り」といった表現は避けるほうが無難です。

作法 回数
お焼香の作法 本願寺派:1回、真宗大谷派:2回、真宗高田派:3回
(それぞれ押しいただかない)
お線香の作法 1本(折って寝かせる)

浄土宗と浄土真宗との違い

名前の似ている浄土宗と浄土真宗ですが、お題目は同じでも考え方や葬儀、お参りの作法で違う点が多々あります。

浄土宗 浄土真宗
宗派の考え方 「南無阿弥陀仏」を唱えると救われるが、極楽浄土で修業をしないと救われない 「南無阿弥陀仏」を唱えると、それだけで必ず極楽浄土へ行けると約束される(他力念仏)。
卒塔婆 立てる 立てない
戒名 「誉」を用いる 男性は「釈」、女性は「釈尼」を用いる
お経 般若心経を読む 般若心経は読まない

宗派ごとの葬儀(7)日蓮宗

日蓮宗は日蓮上人を宗祖とし、法華経を理解し、教えを実践していくことが宗派の特徴です。。
お題目は「南無妙法蓮華経」で、浄土真宗と同じくお題目を唱えると救われるという考え方があります。
日蓮宗では、葬儀もこの世で最後の修行の機会であるとされています。葬儀では、死者を浄土へと導くことを目的としています。

作法 回数
お焼香の作法 押しいただいて1回または3回
お線香の作法 1本または3本

宗教・宗派ごとに葬儀の違いがあることを知っておこう

葬儀形式は故人や自分たちの遺志を尊重してOK

葬儀の流れや作法は、宗教や宗派によって違いがあります。とはいえ、どんな葬儀を行うかは一人ひとりの自由です。代々自分の家が信仰している宗教や宗派に即した葬儀を行わないといけない、という決まりもありません。
それぞれの宗教や宗派に特徴があり、内容が違うということを理解した上で、実際の葬儀では、故人の遺志や自分たちの希望を第一に、葬儀を検討するといいでしょう。

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