2017.12.19

仏式葬儀の作法~焼香の手順と作法

仏式葬儀の作法~焼香の手順と作法

焼香は、仏式葬儀の場合行うことのひとつです。
仏式葬儀に何度か参列すると、「毎回やり方が違うように感じる」、「焼香の正しいやり方ってなんだろう」、と迷うことがあるのではないでしょうか。中には「焼香の順番が近づくたびにドキドキする・・・」という人もいるはず。
焼香の方法にはいくつか種類があるようです。今回は、一般的な仏式葬儀における焼香の手順や作法についてご紹介します。

仏式葬儀における焼香の持つ意味・目的

心と身体のけがれを取り除き、清浄な心で仏様に手を合わせるためのもの

焼香は仏教の作法のひとつで、お香を焚くことです。お香には、心や身体のけがれを取り除く意味があるとされています。焼香をすることで、けがれのない、清らかな心の状態になり、仏様に手を合わせられると考えられています。
葬儀の場では、清浄な心の状態で故人の冥福を祈る意味もあります。

仏式葬儀における焼香は、抹香を焚くのが一般的

お香の種類には、抹香と線香とがあります。
一般的に、通夜・葬儀の場での焼香とは、抹香を焚くことを指す場合が多いです。ただし本来は抹香と線香、どちらを焚く場合でも焼香であり、区別はありません。

自宅へ弔問に訪れる場合は、線香をあげることが多い

通夜の前や、葬儀のあと自宅へ弔問に訪れたときは、抹香よりも線香をあげることが多いです。ちなみに、抹香は「焚く」といいますが、線香の場合は「線香をあげる」という言い方をするのが一般的です。

抹香と線香の違い

抹香は、香木を砕き、細かい木片状にしたものを香炉の上にパラパラと落とし、燃やすことです。線香は材料を細かくして棒状に練り上げたものです。

仏式葬儀における焼香のスタイル

仏式葬儀で行う焼香のスタイルは、「立つ・座る・回す」の3種類がある

抹香による焼香の作法は、3種類のスタイルがあります。
会館や斎場などで葬儀が行われる場合は立礼焼香、自宅や寺院など、畳敷きの会場では座礼焼香というパターンが多いです。自宅が狭い場合や、会場に対して参列者の数が多い場合は、回し焼香が行われるケースもあります。

  • 立礼焼香(遺影の前に立った状態で順番に焼香する)
  • 座礼焼香(遺影の前に順番に座って焼香する)
  • 回し焼香(並んで座り、自分の番が終わったら香炉を隣の人へ回して、順番に焼香する)

仏式葬儀における焼香の作法と手順

焼香の作法は、同じ仏式葬儀でも宗派によって異なる

焼香の作法は、宗派によって異なり、且つ同じ宗派内でも、派閥により異なることがあります。葬儀のたびに焼香の回数が異なるというときは、宗派の違いと考えるといいでしょう。

宗派 焼香の回数
天台宗 特に決まりなし
真言宗 3回押しいただく
臨済宗 1回(押しいただくかどうかの定めはない)
曹洞宗 1回目は押しいただき、2回目は押しいただかず落とす
浄土宗 回数の定めは特にないが、1~3回押しいただく
浄土真宗 派閥により異なるが1~3回、額には押しいただかない
日蓮宗 1回、または3回押しいただく
「押しいただく」とは

押しいただく、という動作は、抹香をつまみ、額(もしくは目)の高さまで掲げることです。

会葬者の数や宗教者によって、焼香の回数が異なる場合もある

宗派ごとの決まりはあるものの、実際は決まりどおりに行わない場合もあります。
例えば、葬儀会場の大きさの都合や、参列者数の数が多く時間調整が必要な場合です。葬儀に立ち会う宗教者の考え方によっても、回数が変動することがあります。
通常と回数が異なる場合は、あらかじめ葬儀担当者からアナウンスが行われるのが一般的です。案内があれば、それに従って動きましょう。

一般的な焼香の作法・手順

仏式葬儀の焼香は、共通して正しい作法というのはないものの、一般的な手順は存在します。相手の宗派、もしくは自分の宗派の作法が分からないときは、一般的な手順で焼香を行うといいでしょう。

立礼焼香の手順

立礼焼香は、係員の案内により、喪主、親族、参列者の順で焼香をします。

  1. 順番が来たら、遺族、僧侶に一礼して祭壇に進む。
  2. 遺影を仰いて一礼し、一度合掌する。
  3. 親指、人差し指、中指の3本で抹香をつまむ
  4. 頭を軽く下げた状態で、抹香をつまんだ手を額の高さへ押しいただく。(宗派によっては押しいただかない)
  5. 抹香を静かに香炉にくべる。
  6. 複数回押しいただく宗派の場合は③~⑤を繰り返す
  7. 遺影に向かい、合掌する。
  8. 一歩下がり、遺影に一礼し、向き直って僧侶、遺族に一礼する。

座礼焼香の手順

基本的な手順は、立礼焼香と同じですが、座ったままで行うのが特長です。中腰になり、遺影の前では膝行・膝退(しっこう・しったい)で移動し、焼香を正座して行うのがマナーです。

  1. 順番が来たら、遺族、僧侶に一礼し、腰をかがめた状態で焼香台へ進む。
  2. 座布団の前で両手を使って膝立ちし、にじり寄って(膝行)正座する。
  3. 遺影を仰いで一礼し、一度合掌する。
  4. 親指、人差し指、中指の3本で抹香をつまみ、頭を軽く下げて手を額の高さへ押しいただく。(宗派によっては押しいただかない)
  5. 抹香を静かにくべる。
  6. 複数回押しいただく宗派の場合は、④~⑤を繰り返す。
  7. 遺影に向かい、合掌する。
  8. 両手を使って膝立ちし、そのままの姿勢で後退(膝退)する。
  9. 中腰になり、僧侶、遺族に一礼して中腰のまま席に戻る。
膝行・膝退の方法

・手の親指を立て、他の指は握る。

・そのまま両腕を体のやや前方に置き、力を込めて体を少し持ち上げるようにしながら、ヒザを少しずつ前、もしくは後ろに移動する。

回し焼香の手順

回し焼香は隣の人から香炉が回ってくる方法です。自分の順番の前後の人に軽く会釈をするのがポイントです。畳に座っている場合は正座になおり、椅子席の場合は自分のヒザの上に香炉をのせて焼香します。

  1. 隣の人から香炉が回ってきたら軽く会釈をして受け取り、自分の正面に置いてから、次の順番の人に「お先に」と軽く会釈する。
  2. 親指、人差し指、中指の3本で抹香をつまみ、頭を軽く下げて手を額の高さへ押しいただく。(宗派によっては押しいただかない)
  3. 抹香を静かにくべる。
  4. 複数回押しいただく宗派の場合は、②~③を繰り返す。
  5. 遺影に向かい、合掌する。
  6. 隣の人に香炉を回す。

一般的な線香のあげ方について

線香のあげ方も、宗派によって線香を折る・折らないの違いや、何本あげるかが異なります。今回は一般的な線香のあげ方をご紹介します。
注意したいのは、線香の火をつけるときと消すときです。つける際は、必ずロウソクを使ってつけましょう。ライターやマッチから直接つけてはいけません。炎を消すときも、息を吹きかけて消すことは「悪行を積みやすい」という意味からタブーとされています。

  1. 仏壇の前に座り、遺族に一礼する。
  2. 遺影に一礼する。
  3. 右手に線香を1本とり、ロウソクの火を移す。ロウソクの火は、すでについていればそのまま使い、ついていない場合は自分でつける。
  4. 線香の炎を左手であおいで消すか、スッと勢いをつけて下に引いて消す。
  5. 香炉に線香を立てる。(宗派によって寝かせる場合もある)
  6. 遺影に向かい、合掌する。
  7. 遺族に一礼する。

仏式葬儀での数珠の持ち方

仏式葬儀中は左手に持つか、両手にかけるのが一般的な作法

数珠は仏式葬儀の際に持参するもののひとつです。お経を唱えるときや合掌するときなどに使います。
数珠の持ち方は、葬儀中であれば左手に持つか、両手にかけるのが一般的な作法です。左手に持つか、両手にかけるかは、宗派によって異なります。葬儀中、焼香の順番が回ってきたときは、房を下にして左手で持つようにしましょう。左手で持つのは、右手(利き手)はいいこともすれば悪いこともする「不浄の手」という思想があるからです。
移動するときは手首にかけるのが基本ですが、紛失を防ぐために、使わないときはポケットやバッグにしまいましょう。畳や椅子に置く場合も、座具と呼ばれる携帯ケースの上にのせ、直接置かないのがマナーです。

仏式葬儀の作法で、困ったときの対処法

同じ仏式葬儀でも、相手の宗派が自分と異なる場合の焼香は、どちらの作法でもよい

宗派によって作法が異なるので、自分の宗派と相手の宗派とが違う、というケースも多々あります。結論から言えば、どちらの作法で行っても問題はありません。「本来は自分の宗派の作法で焼香するもの」という意見もあれば、「相手の宗派に合わせると丁寧」といわれることもあるからです。

仏式葬儀中に焼香の作法で迷ったときは、遺族のやり方にならう

葬儀の参列経験が少なく、特に信仰している仏教の宗派もない場合は、焼香の手順に戸惑うかもしれません。宗派ごとの作法が決まっているとはいえ、実際は3回押しいただく宗派でも都合に合わせて回数が減ることもあります。迷ったときは遺族、もしくは周りの人のやり方にならう形で焼香すれば問題ないでしょう。

作法第一ではなく、心を込めて焼香することを意識する

焼香の作法は都合によって調整されることがあるように、厳密なマナーがあるわけではありません。相手の宗派、自分の宗派が分からないときは、一般的な方法で行えば問題ないでしょう。どちらかというと、焼香の回数にこだわるよりは、心を込めて行うことが大切です。

仏式葬儀の最中、足がしびれたときは、足の指に体重をかける

座礼焼香や回し焼香の場合では、長時間正座をするため、足がしびれることがあります。
足がしびれたときは、立ち上がる前に一度、10本の足の指の腹を全部床につけるようにしてみてください。体重をかけることで、しびれが軽減されやすくなります。順番が近づいてきたら、そっと体重をかけて準備しておくといいかもしれません。

焼香のいわれ

焼香はお釈迦様の悩みを解決するために使われたのが始まり

焼香のいわれはいくつかありますが、ひとつはお釈迦様の悩みを解決するためだったという説です。悩みとは、臭い消しです。
お釈迦様がいらっしゃったのは、今からもう2,000年以上前のことです。
仏教を説いて回られたお釈迦様ですが、耳を傾ける聴衆の多くは、そのころのインドで最下層とされた労働者や乞食たちでした。当時は冷房機器があるわけもなく、聴衆たちも一日中汗を流して働いたあとに集まったので、周辺が体臭という名の悪臭で満ちたことは想像に難くありません。
元々は香を焚くことで、そうした悪臭を和らげようとしたことが、今のように心身のけがれを落とし、清めることとして理解され、根付いていったといわれています。

遺体の臭い消しにも焼香が活用された

そもそもはお釈迦様の悩みを解消するためだったとはいえ、その後焼香は、遺体の臭い消しとしての役割も果たしてきました。今のように冷蔵庫やドライアイスが存在しなかった時代は、遺体の腐敗臭も相当なものだったはずです。
焼香の香りは、腐敗臭によって厳粛な葬儀の場がけがされないようにするために、必要だったと考えられます。

焼香をすることでお釈迦様が姿をあらわしてくださるという言い伝えも

焼香には、ほかにもいわれがあります。
お釈迦様の弟子はたくさんいますが、その中の兄弟がお釈迦様をお迎えするためにお堂を立て、お香をたいたところ、お釈迦様があらわれ、教えを説かれたというものです。

焼香の香りに安らぎを見出すという意味も生まれた

心を込めて焼香をすれば、お釈迦様があらわれてありがたいお話を聴くことができるという言い伝えは、時代とともに、香り自体に安らぎを見出されるようになりました。
例えば焼香の香りを、素晴らしい香りが満ちている浄土の世界であると考える場合もあれば、焼香の香りが広がる様子を、仏の教えが隅々まで浸透していくと見立てる場合もあります。

仏式葬儀での焼香の作法や手順で大切なことは、心を込めること

一般的な仏式葬儀における焼香の作法や手順を理解した上で、臨機応変に対応しよう

仏式葬儀における焼香のスタイルは、会場によって異なるのが一般的です。焼香の作法や手順も、宗派によってさまざまで、「こうあるべき」、「必ずこうする」という厳格な決まりがあるわけでもありません。葬儀の場によって変わることもあるため、臨機応変に対応するほうがいいでしょう。
大切なことは、焼香によってけがれを落とし、心を込めて故人の冥福をお祈りすることです。多少の作法や手順の違いがあっても、心がこもっていれば、故人にも十分気持ちが伝わるはずです。

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